開幕戦で東農大生物産業学部のルーキー・玉井大翔(旭川実出)が道教大函館を相手にノーヒットノーランを達成した。
北海道六大学リーグ史上7人目だが、1年生の開幕戦での無安打無得点試合は史上初の快挙。
昨夏甲子園出場も登板機会なしに終わった悔しさを胸に、大学公式戦初登板で129球の大仕事をやってのけた。
快挙を目前に、固唾(かたず)を飲むスタンド。その中で玉井は最後の打者にバットに空を切らせ、12個目の三振で快記録を達成した。
それでも、ガッツポーズをすることもなく、遠慮がちに笑みを見せただけ。リーグ史上初となる1年生投手による春の開幕戦ノーヒットノーラン。
こん身の129球は、大学球界へこれ以上ない名刺代わりとなった。
「実感は沸かないが、自分の持てる力を思い切り出そうと思った。(無安打は)5回ぐらいから言われていたが、意識しないようにした」
先発を伝えられたのは球場入り後。驚きを胸に沈め、打者と対じした。
3回までは1人の走者も許さず、走者を背負ったのは四球と失策で出塁を許した2イニングだけ。
4回無死一塁は投前併殺で、6回2死一、二塁はスライダーで空振り三振に仕留め、ピンチを切り抜けた。
同じ1年生の女房役、亀沢英晃(天理出)は「ブルペンから直球もスライダーも走っていた。右打者への外角の出し入れが生きた」と話した。
不完全燃焼を原動力にした。高校時代の公式戦登板は、2年秋の全道大会準々決勝の北照戦が最後。公式戦完投は1度もない。
エース鈴木駿平(現立正大)と成瀬功亮(現巨人育成)に隠れ、昨夏の甲子園は登板機会なく初戦敗退した。
故障でもないのに投げられない悔しさ。
「負けたのも悔しかったが、最後に投げられなかったことが悔しかった。その分、神宮で投げたいと思った」
と玉井。網走市にある同大は、地元佐呂間町にほど近い。
幼いころから親しんだオホーツクの風が大学野球の聖地である神宮のマウンドに上がる夢を後押しした。
全国から集まった同期や先輩のレベルの高さに刺激を受けながら、3月の沖縄キャンプからの好調をそのままぶつけた。
2季連続、春4年ぶりの優勝に挑む開幕戦をルーキーに託した樋越勉監督(54)は「今一番調子がいいし、ブルペンで(俺を投げさせろと)目で訴えてきた。
素質は一番。ウチで輝きを取り戻せと言ったんだ。意地があったと思う」と絶賛した。最高のスタートを切った1年生。
「鈴木や成瀬に負けないように頑張らないと」。玉井はその先に視線を向けた。
◆玉井 大翔(たまい・たいしょう)1992年(平4)6月16日、網走管内佐呂間町生まれの18歳。
佐呂間小1年の時に「佐呂間ライオンズ」で野球を始める。佐呂間中時代は軟式で地区2回戦が最高成績。
旭川実では1年秋の支部予選に背番号18で初ベンチ入り。3年夏の甲子園は背番号11も登板機会なし。
家族は両親と兄、姉。1メートル78、68キロ。右投げ右打ち。
http://www.sponichi.co.jp/baseball/news/2011/05/01/kiji/K20110501000736960.html