「美肌温泉ボトル」の無人販売コーナー。温泉水は肌がしっとりすると人気だ
島根県松江市玉湯町の玉造温泉が「歩く街」としてよみがえりつつある。4月には神話の世界を体感できる8体のオブジェも完成した。
散策する人が増えており、来春に温泉街の道路を一方通行にする計画も進んでいる。
玉造温泉はかつて、団体旅行客でにぎわった。ただ多くの旅館が施設内に土産物や飲食の店を設けたことで、温泉街の商店や飲食店離れが進み、多くが廃業した。
その後、団体旅行ブームも去り、老舗(しにせ)旅館4軒が相次いで倒産した。
危機感を募らせた地元自治会や旅館組合、商工会などは2007年、「玉造温泉活性化プロジェクト会議」を結成した。
旅行者に歩いてもらえる街にするため、歴史と神話にちなんだスポットを作っていった。
中でも玉作湯(たまつくりゆ)神社の「願い石」は、触りながら水をかけて祈ると願いがかなうとされ、毎月約2千人が訪れる名所になった。
玉造の湯は、出雲国風土記が「ひとたび濯(すす)げば形容(かたち)きらきらしく……」とたたえている。湯が湧き出る場所に「美肌温泉ボトル」(1本200円)を置き、詰めて持ち帰れるようにすると若い女性らの関心を集めた。
鯉(こい)が寄ってくる川沿いの井戸は「恋来(こいのくる)井戸」と名付けた。
オブジェは「歩く街」の魅力をさらに高めるために設けた。
平城遷都1300年祭の公式マスコット「せんとくん」を考案した彫刻家の藪内佐斗司さんが手掛け、ヤマタノオロチや因幡の白兎(しろうさぎ)といった古事記や出雲国風土記の神話を鋳鉄製の像で表現している。
地元関係者らによる「プロジェクト会議」が企画し市が整備した。
週末の温泉街は「パワースポット」ブームもあって女性が目立つようになった。
空き店舗には、美容関係のアンテナショップなどが開店したほか、日帰り客も増えて「昼食プラン」を始める旅館も出てきた。
散策をする人が増えたことで、「車道を一方通行にしないと危ない」という声も高まった。来年4月から、午後3時から午前0時まで通行規制する予定だ。
松江観光協会玉造温泉支部の周藤実事務局長は
「女性に焦点をあて『姫神の湯』という方向性を共有することで、中高年男性が中心の温泉街が一気に変わった。宍道湖の夕日や周辺の古墳などにも『街歩き』のスペースを広げたい」と話している。
http://mytown.asahi.com/areanews/shimane/OSK201104300060.html