郵便不正事件の証拠品だったフロッピーディスク(FD)のデータを改ざんしたとして、
証拠隠滅罪に問われた大阪地検特捜部の元主任検事、前田恒彦被告(43)に
対し、大阪地裁は12日、懲役1年6月(求刑・懲役2年)の実刑判決を言い渡した。
中川博之裁判長は「真相解明を目的とする刑事司法の根幹を破壊しかねない所業で、
極めて強い非難に値する」と実刑の理由を述べた。
判決によると、前田元検事は、厚生労働省の公的証明書が不正に発行された
郵便不正事件の捜査で、09年7月13日、地検庁舎内で、同省元係長、
上村(かみむら)勉被告(41)の自宅から押収したFDのデータを改ざんした。
中川裁判長は「検察官は有罪立証の妨げになる消極証拠とも誠実に向き合う態度が
求められている」と指摘。
前田元検事が、裁判が紛糾することや、上司から叱責(しっせき)されるのを恐れてデータを
改変したことについて「主任検事の重圧があったにせよ極めて短絡的。検察官の行為と
して常軌を逸している」と批判した。
弁護側は、改ざんされたFDデータは、厚労省元局長、村木厚子さん(55)=無罪確定=
の有罪、無罪を決定付ける証拠とは言えないと主張していた。中川裁判長は「FDは重要な
客観証拠。改変前のFDデータを記載した捜査報告書が作成されていなければ、
村木さんに重大な不利益が生じるおそれがあった」と判断した。
前田元検事の裁判では、検察、弁護側双方が、前田元検事の証拠改ざんを知りながら、
元特捜部長、大坪弘道被告(57)と元特捜部副部長、佐賀元明被告(50)=ともに
犯人隠避罪で起訴=が隠蔽(いんぺい)したと主張したが、判決は上司2人の対応に
ついては言及しなかった。
大坪元部長と佐賀元副部長は、裁判前に争点を整理する公判前整理手続き中。
2人は、起訴内容を全面否認している。前田元検事の裁判とは別の裁判官3人が担当し、
異なる証拠や証人に基づいて審理される。【苅田伸宏】
毎日jp
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