“昼ドラ”といっても、ピンとこない人が増えているのではありませんか。
かつては、テレビ各局が競うように、30分枠のドラマを13時台に放映していました。
しかし、2000年以降、制作費の削減を理由にドラマの打ち切りがあいつぎ、正午から14時台まで、
ずるずると暇ネタを流すだけのワイドショーが増えました。
そんななか、孤軍奮闘しているのがフジテレビです。
東海テレビが制作した昼ドラを、現在も放映しつづけています。
13時半からスタートするこのドラマ枠で、とりわけ注目されるのは、男女の愛憎が入り乱れる
ドロドロしたストーリーのものです。
ちょっと前なら横山めぐみの『真珠夫人』(2004年)や大河内奈々子と小沢真珠の『牡丹と薔薇』
(2004年)。
最近だと、安達祐実の『娼婦と淑女』がおもしろかったですね。昼から過激なラブシーンあり、
SMあり、暴力あり。もう、なんでもありの展開で、奥さまたちの心をわしづかみにしています。
現在、放映されているのは『さくら心中』。
主演は、韓国で芸を磨いた女優・笛木優子。
ドロドロとしたドラマの展開に、体当たりで挑んでいます。ごく簡単に内容を紹介してみましょう。
笛木が演じるのは“桜子”という女性。
育ての父は、実母と心中。
みずからは、恋人と心中未遂。桜子は生き残り、恋人との子どもを出産。
そして、心中直前の恋人とのセックスをのぞいていた高利貸しのおっさんと結婚。
ところが、しばらくすると死んだと思っていた恋人があらわれる……。
これだけでも、どれだけドロドロしているのかおわかりになるかと思います。
2月21日からの放映では、あらわれた恋人の情婦として、あの元“モーニング娘。”の中澤裕子が登場。
正直いって、びっくりしました。
今年2月には、飯田圭織や保田圭とともに、テレビ東京の『いい旅・夢気分』に出演し、「おっ、
中澤も旅タレントになってしまったのか」と思っていた矢先でしたから。
かつて、藤井フミヤが日曜午後枠の旅番組に出演しているのを見て、フミヤが「降りて」きたと
ナンシー関が書いています(『夜間通用口』文春文庫、p180)。
ゴールデンタイムの番組に出演していたような歌手や俳優が、(おそらく)出演料も安いであろう
日曜午後の枠、それも旅番組に出演していることを「降りる」と表現したのです。
筆者は、まず『いい旅・夢気分』を見て、中澤が「降りて」きたと思い、昼ドラに彼女が出演して
いるのを見て、その「降り」を確信しました。
せつない気分になる一方、温泉で身体を売るコンパニオン役を演じるなど、気持ちの入った演技を
見るにつけ、中澤のしたたかさに感心したのでした。
そんな中澤を見ていると、「降りたって、いいじゃん」と思います。
でも、『皇潤』のCMに出演する西田敏行や『美・皇潤』のCMに出演する田村正和の「降り」方は、
中澤の「降り」方とはちょっと違いますよね。気になるところです。
(谷川 茂)
▼ガジェット通信 [2011.03.07 20:00:00]
http://getnews.jp/archives/102575 ▽写真=『さくら心中』のスクリーンショット
http://get.nifty.com/cms_image/get/topics/110307000233/01.jpg