水田や畑の面積を広げようとする農家に戸別所得補償の支給を増やす農林水産省の計画について、
身内の九州農政局から「異議あり」の声があがっている。農水省は、農家の大小を問わずに支給の
加算対象にする方針だが、同農政局は、競争力強化の観点から「規模の大きな農家に絞るべきだ」
と提言している。
問題になっているのは、農水省が来年度から導入しようとしている「規模拡大加算」と呼ばれる措置。
農地を借りて規模を広げた農家に対して拡大分10アールあたり2万円を支給する。来年度予算案
に100億円を盛り込んだ。農地拡大を促すのがねらいだが、農家の経営規模は問わない。
これに対し、九州農政局は「すべての農家を加算対象にするのではなく、認定農業者や集落営農を
している組織に対象を絞り込むべきだ」との提言をまとめた。農水省が全国7カ所の農政局などに対して、
国内の農業対策に関する提案を求めたのに応える形で作成した。
認定農業者は、市町村から地域農業の担い手として認められ、低利融資など様々な支援の対象
になっている。法人を除き、全国に約17万4千戸ある。耕作面積は平均6.9ヘクタールで、全農家
平均の5倍を超える(いずれも05年)。集落営農組織は、集落単位で共同で農機具を所有したり、
農作業を行ったりしており、一般的に規模は大きい。
九州農政局は「農地の集積を進めるには、加算は有効だが、限られた財源で効果をあげるには、
地域農業の中心となっている人たちに対象を絞った方が適当」(戸別所得補償制度推進チーム)と話す。
提言は、1月12日に農水省内で開かれた地方農政局長会議で、九州農政局の飯高悟局長が説明した。
鹿野道彦農水相は、朝日新聞の取材に対し「来年度は(農水省の方針通りに)そのままスタートするが、
指摘を踏まえた議論はしていきたい」と述べた。
▽アサヒ・コム
http://www.asahi.com/politics/update/0209/TKY201102090466.html