堺市が9日発表した2011年度の当初予算案は、一般会計が3429億円で前年度比4・7%の大幅増となった。
税収が増加し、行財政改革で財源を捻出したが、生活保護費の増大などで効果が吹き飛び、借金にあたる市債
を前年度比20・5%増の424億円発行した。限られた財源を「子育て」「歴史文化」「低炭素社会」の3分野に
重点配分し、竹山修身市長は「生活重視の堅実な予算だ」としている。
■帳消し
歳入は、企業の業績回復やマンションの増加などで市税が11億円増えた。行革として、事業仕分けの対象となった、
区役所で健康相談を行う「健康づくり事業」など3事業を廃止。外郭団体は、市水道サービス公社など3団体を廃止
するなどして見直した。職員数も前年度から162人削減し、計60億5000万円の効果を生み出した。
しかし、歳出面では、不況で生活保護費が35億円増えて458億円に。子ども手当や医療費などの扶助費が88億円
増の1039億円に上り、税収増と行革による改善効果が帳消しされた。市債残高も3216億円と6・2%増え、市民
1人あたりの借金は2万2000円増の38万4000円となった。
■子育て重視
重点化した3分野は、新年度から10年間の市政運営方針「マスタープラン」に沿ったもの。中でも子育てを最重点化し、
予算案には、主なものだけで前年度より18億円多い121億円分の事業を計上した。
待機児童対策として、民間保育所を3か所、分園を1か所それぞれ設けるなどして定員を約400人増やす。預かり保育
を行う幼稚園も3か所増やす。また、放課後に学習指導を行う小中学校を31校増やすなど教育にも力点を置いた。
竹山市長は記者会見で「『子育てなら堺』という街にして、子育て世帯を招き入れたい」と述べた。
◆トレセンに280人合宿所来春オープン目指す◆
堺市は新年度、堺区の市立サッカー・ナショナルトレーニングセンターに、府サッカー協会と協力して280人を収容できる
合宿所を建設する。遠方の小中学生らに利用してもらうのが狙いで、2012年春のオープンを目指す。
2人部屋から20人の大部屋まで約70室を計画。屋上には最大1000席の観客席を設けるほか、会議室や食堂、浴場もつくる。
同センターは、天然芝を含むサッカーとフットサルのコートが22面ある日本最大級の施設。昨年4月のオープン以降、
今年1月までの来場者は約52万人に上り、年間50万人の目標を10か月で達成した。
◆迫り来る少子高齢化◆
竹山市長は記者会見で、新年度からの3年間で163億円の歳出カットを見込んだ行革プログラム案を掲げ、健全な財政を
保つと胸を張った。ただ、これらの効果は、前市長時代に事業化された新清掃工場など大規模施設の建設で帳消しになる。
問題はその先だ。政令市移行後も増えてきた人口は、数年後には減少に転じると予想され、市税収入は先細り、高齢化で
医療費は今以上に増大するからだ。
人口を維持するためには子育て施策の充実のほか、住民サービスの向上が欠かせない。竹山市長は、大阪都構想が掲げる
同市分割案に反対し、区の権限強化で身近な区役所を目指すという。今回、区長裁量予算の特別枠を設けたが、
1000万円と物足りなさも感じる。限られた予算でサービスをどう高めるか。これからが手腕の見せ所だ。
▽読売新聞
http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/osaka/news/20110210-OYT8T00076.htm ▽参考画像
http://www.yomiuri.co.jp/photo/20110210-245318-1-L.jpg