超新星爆発によって鉄より重い元素が作られる過程で、一部の元素は従来の理論予測の2〜3倍の速さで
合成された証拠が、理化学研究所などの国際共同チームの実験で得られた。超新星爆発による重元素合成
過程を再現したのは世界初。太陽系の一部の重元素が理論予測よりも多く存在する謎を解く糸口になると
いう。米科学誌「フィジカル レビュー レターズ」(電子版)に発表した。
自然界に存在する鉄からウランまでの元素の約半分は、巨大な恒星が寿命を迎えたときの超新星爆発で
できたとする説が有力だ。恒星中心にあった鉄などの原子核が中性子過剰となり、中性子が陽子に変わる
「ベータ崩壊」を繰り返してより重い安定した元素が合成されていくという。
国際チームは、理研の大強度重イオン加速器施設「RIビームファクトリー」(埼玉県)で、光速の約70%
まで加速したウラン原子をベリリウム原子にぶつけて中性子過剰な重い原子核を生成し、ベータ崩壊の過程を
測定。その結果、中性子過剰なジルコニウムとニオブは理論の2〜3倍も速く崩壊することが判明した。
理研仁科加速器研究センターの西村俊二先任研究員は「重元素合成の謎を少しだけはぎ取った。
これから超新星爆発の過程を解明していきたい」と話す。(小野晋史)
▽産経新聞(2011.2.10 17:55)
http://sankei.jp.msn.com/science/news/110210/scn11021017590001-n1.htm