ムバラク大統領の即時退陣を求めるエジプトの民衆デモは5日、前日から夜を徹して続けられた。
その一方、再開する商店も増えはじめ、街は日常の顔を取り戻しつつある。ただ、デモの影響で
物価高や品不足は深刻だ。エジプトでは週初めとなる日曜日の6日を控え、市民は事態の早期収拾を願っている。
熟れたバナナの房が店先にぶら下がり、商品棚にはパック詰めされたニンジンやキュウリ、ニンニクが並ぶ。
カイロ中心部の青果店は5日、3日ぶりに店を開けた。
ところが、近所の主婦らは店先をのぞくだけで、何も買わずに帰ってしまう。デモの影響で物流が混乱。
仕入れ値が上がり、価格を3〜4倍に値上げせざるを得なかったからだ。
店先にたたずむ店主のロトフィさん(48)の表情は浮かない。「このままじゃ、全部捨てなくちゃいけなくなる……。
全部デモのせいだ。一刻も早く終わってほしい」と怒りをぶつけた。
路上でバラの花束を売るアフマドさん(16)は、「食べ物は高くても買わずにはいられないが、心に余裕がないと
花は売れない」とぼやく。いつもなら1日15束は売れていたが、最近は半分以下だという。
地元紙などによると、1月25日に反政府デモが始まって以降、主食のパン、米、マメの価格は最大で80%上昇。
例えばエジプト料理でよく使われるトマトは1キロあたり4エジプトポンド(約56円)。デモが始まる以前の4倍に跳ね上がった。
ムバラク政権はこれまで、補助金を使ってパンなどの価格を安く抑え、国民の不満を抑えてきた。
休業していたガソリンスタンドも、営業を再開するところが増えている。ただ、東部スエズの製油所からの陸路輸送が
夜間外出禁止令の影響で滞った。1リットル1.75エジプトポンド(約25円)の価格はデモの前と変わらないが、
品薄のため自発的に販売量を制限するところがほとんどだ。
カイロ市内のあるスタンドでは、車1台につき30リットルまでしか売らない。「何で満タンにできないんだ」と店員にかみつく客も少なくない。
給油に訪れた商店経営サイードさん(51)は「友人の分もポリ容器で買いたいのに、どのスタンドでも断られた」と怒っていた。
店長(35)は「デモが長引けば、この先どうなるか分からない。みんなのためを思って販売を制限している」と話した。
市内では一時、略奪行為も横行したが、いまのところ収まっている。閉鎖されていた銀行業務は6日から再開される見通しだ。
政府は国営テレビを通じ、タハリール広場を占拠するデモ参加者に対し、通常生活に戻るよう重ねて促している。
http://www.asahi.com/international/update/0205/TKY201102050337.html http://www.asahi.com/international/update/0205/TKY201102050337_01.html カイロで5日、大統領派との小競り合いに集まった反政権派の市民に、落ち着くよう呼びかける男性
http://www.asahicom.jp/international/update/0205/images/TKY201102050342.jpg