鳥獣による農作物被害が深刻化するなか、和歌山県日高川町は捕獲したイノシシや
シカの肉を使った「ジビエ料理」を、町立小中学校の給食のメニューに加えることを決めた。
資源の有効活用とともに、食事を通して子どもたちに地域の農業や食について考えて
もらうのが狙いで、3月中に町立13小中学校で実施し、来年度から本格導入する。
捕獲した野生動物を学校給食に利用するのは県内で初めてという。
町まちみらい課によると、2009年度、町内の農作物の鳥獣被害は約2900万円。
イノシシとシカの捕獲数は同年度計1468頭にのぼり、07年度の794頭から大幅に
増えている。
町は昨年5月、これらを食材として売り出すため、同町船津に有害鳥獣食肉処理
加工施設「ジビエ工房紀州」を開設、肉を町内の宿泊施設や物産店などで提供している。
この施設をさらに活用し、食育にも役立てようと、給食への導入を決めた。
メニューは、町教委や町内の旅館の料理人らで考案。1月24日に各学校の校長や
栄養士、町関係者らを対象に試食会が開かれ、イノシシの肉を使ったカレーや、
イノシシとシカの合いびき肉を使ったコロッケ、シューマイ、肉じゃがなど5種類が用意された。
口にした校長らに「牛肉や豚肉と比べても味は劣らず、子どもたちも気に入ってくれるはず」
と好評で、栄養士からも栄養価に問題はないとお墨付きをもらったという。イノシシの肉は
高カロリーでたんぱく質、脂質が多く、牛肉に代用でき、シカの肉はカロリーが牛肉の3分
の1とヘルシーなため、鶏肉の代わりに使える。
4月から月に1、2回程度、給食にジビエ料理を取り入れる予定で、今後、メニューを
もっと研究し、増やしていく。
玉置俊久町長は「初めは抵抗感があるかもしれないが、どれも食べやすいメニューを
そろえた。子どもたちが、地域の農業や環境のことなどを考える切っ掛けになれば」と
話している。
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20110202-OYT1T00571.htm