和歌山県白浜町の観光名所「三段壁」で、官・民合同による自殺防止のパトロールが始まって2年を迎える。
パトロールの効果で自殺者の増加に歯止めはかかったが、いまも自殺者は後を絶たない。
関係者は「パトロールはあくまで水際作戦。抜本的な対策が不可欠という思いは強まるばかり」と話し、
問題の深刻さを口にする。
三段壁は高さ50、60メートルの岩壁が海に直立する景勝地。
一方で、「自殺の名所」として紹介されることも多い。
白浜署がまとめた三段壁での自殺取扱者数は2006年11人、07年9人だったが、08年は21人と急増した。
増加を食い止めようと白浜町と県、白浜署、NPO白浜レスキューネットワーク(白浜町)が09年2月4日、
初の合同パトロールを実施した。以後、毎週2回、夕方に行っている。
町の集計では09年2月〜10年3月に99回・延べ875人、10年4月〜11年1月は67回・同384人が参加した。
パトロール専用車両を導入した10年2月からは千畳敷や鴨居方面も回っている。
この結果、09年、10年の自殺取扱者数は各10人となり、08年に比べて半減した。
白浜署が保護した人は、署独自の活動によるものも含めると09年51人、10年48人。08年は32人だった。
合同パトロール中に保護した人の数に関する記録はないが「2年間で10人以上は確実だ」(白浜町)という。
保護した後のことについては関係機関が本人と話し合っているが、当面、帰る場所がない人には同ネットワークが
すべて応対。
ネットワークの世話を受けて共同生活しながら就職活動をし、自立を目指している。
同ネットワークが10年に保護した人は93人。独自の活動による保護のほか合同パトロール、行政・警察の紹介で
保護した人も含んでいる。
このうち58人が最終的に帰宅し、25人が自立した。
しかし、共同生活になじめないなどの理由で保護施設を自主退所した人もいるという。
パトロールに参加している町職員は「巡回中にも保護しており、一定の成果は出ていると思う。でも、大事なのは
保護した後のフォロー。町役場としてどこまで取り組めるのかという点で課題は多い。巡回できていない曜日、
時間帯への対策も課題だが、いまのパトロールだけで手いっぱい」と苦悩している。
同ネットワークの藤藪庸一理事長は「近年、相談や保護件数が増え、それらの対応に追われる状況。当面は行政側で
パトロールを受け持っていただき、わたしたちは一時保護に関連する活動に専念できるようになればありがたい」
と話している。
▼AGARA紀伊民報 [2011年02月02日更新]
http://www.agara.co.jp/modules/dailynews/article.php?storyid=204875