ニューヨーク・マフィアの5大ファミリーのボス3人に対する1986年の相次ぐ有罪判決は、連邦当局が言うところの
「マフィア時代の終焉」を告げる出来事となった。
「従来のような犯罪組織は今後いなくなるだろう」と、当時のウィリアム・ウェブスター米連邦捜査局(FBI)
長官は述べた。
「マフィア・コミッション裁判」として知られるこの一件をきっかけにラ・コーサ・ノストラ、いわゆるマフィアは
細分化していった。
1992年に「ダッパー・ドン(パリッとしたドン)」ことジョン・ゴッティに対して終身刑判決が下されたことも
マフィア衰退に拍車をかけた。ゴッティは2002年に刑務所で死去した。
だが、複数の米司法当局高官による20日の発言はマフィア復活を印象付けるものだ。
「ラ・コーサ・ノストラは米国で最も危険な犯罪組織の一つだ」。
エリック・ホルダー司法長官は、20日のFBIによる犯罪組織の一斉摘発に関する記者会見でこう述べた。
また、FBIのJanice K. Fedarcykニューヨーク副支局長は「昨今のマフィアは昔よりも品があって、おとなしいと
言われているが、本日起訴された罪状を見る限り、それは真実ではない」と述べた。
5大ファミリーの1つ、コロンボ家の悪名高きボス、ジョー・コロンボの弁護をかつて行ったバリー・スロトニック氏も
「以前のマフィアに関する情報が間違っていたのか。それとも今の情報がうそなのか」と話す。
マフィアは近年では、テレビのエンターテインメントとみなされている。
リアリティー番組『グローイング・アップ・ゴッティ』の主役は、米マフィア史上最も悪名高いボス、ゴッティの子ども
と孫だ。また、HBOのドラマ『ザ・ソブラノズ/哀愁のマフィア』は、架空のマフィア一族のボスのストレスだらけの
日常を描いている。
ニューヨーク・ブルックリン地区検察局の組織犯罪部門の元検察官、マーク・フェルドマン氏は、マフィアは「過去20年
にわたる数々の訴追によって弱体化しているのは確かだが死んではいない。再び台頭できるだけの資金力を依然有している。
マフィアカルチャーも依然存在するし、安易な金もうけにあこがれる人たちもまだいる」と話す。
また、20日に起訴された罪状の一部は、80年代に行われた犯罪に対するものだ。
被告人の多くは、新顔のマフィアではなく、服役経験者だ。
やはりブルックリン地区検察局の組織犯罪部門で以前検察官を務めていたカーチャ・ジェスティン氏は、かつてマフィアは
多くの商売に触手を伸ばしていたが、今は「日常生活にかかわる主要産業では、いかがわしい商売は営んでいない。
存在感はだいぶ薄れている。
だが依然存在しているのは確かであり、相変わらず暴力や悪質な手段を使って金をもうけている」と話す。
80年代に組織犯罪事件の捜査を行っていたニューヨーク市警の元刑事ジョー・コフィー氏は今のマフィアには
「かつてのような強大な影響力はない」とし、議員や警察官とのコネがないことがその主な原因だと述べた。
71年から98年までFBI捜査官を務めガンビーノファミリー捜査班を率いたブルース・モウ氏は、FBIは、9・11同時多発
テロ後、リソースをテロや知的犯罪事件に振り向けざるを得なくなったと話す。
だが、20日の一斉逮捕をきっかけに、組織犯罪対策に再び関心が向けられることを期待しているとし、次のように述べた。
「対処に当たる捜査官の数が少ないと分かれば、マフィアは勢いづくだろう。
FBIがリソースをシフトし続ければやつらは再び結束し力をつけるだろう」
http://jp.wsj.com/US/node_173220