【スポーツ経営放談】横浜身売り話 甘かった「詳細調査」
http://www.sankeibiz.jp/business/news/101004/bsg1010040502000-n1.htm http://www.sankeibiz.jp/business/news/101004/bsg1010040502000-n2.htm (記事元より一部抜粋)
■球団人事収拾つかず
横浜買収前のTBSは、増収・増益を続ける成長企業ではなかったが、わが国最初の民放局として
安定経営を維持していた。一方、当時の横浜は1998年に日本一に輝いた後、戦力が低下傾向に
あったが、依然として高い人気を保っていた。球団経営が表面上順風のように見え、かつ、球団買収の
話が持ち込まれてからシーズン開始までに時間的制約があったこともあり、
TBSは「due diligence」(買収先の詳細調査)が甘かった。結果的に、
「球団が強そうだし、黒字経営、球団が出資する横浜球場も黒字」だったことが横浜買収の決め手になった。
TBSの首脳は球団経営の難しさをさほど深く考えなかったようだ。だから、
そのツケがすぐにまわってきた。
その第1は球団人事。TBSの中で最も横浜の内実を把握しているのはスポーツ部のはずだが、
球団社長に昔、高視聴率を取ったドラマ番組のプロデューサーが就任した。どの球団でも起こる、
親会社からの出向組・生え抜き・中途採用・選手を世話する選手出身者で構成する球団内部4派閥の
人事軋轢(あつれき)を、天下り社長は統括・管理できなかった。
第2は球団戦力の低下。戦力補強に失敗し、監督を交代しても球団成績の低迷が続いた。
優勝争いから遠ざかると観客動員力が低下する。当然、赤字に転落するし、黒字復帰の
見通しが立たなくなった。
第3は球場との関係。球場の敷地の一部は国が所有、球場を建設したのは横浜市、と関係者が
錯綜(さくそう)する。球場は黒字なのに、球団は赤字という、今のプロ野球界が抱える最大の
試練を横浜も経験することになった。
買収後、横浜の赤字が常態化したので、TBSは2002年3月期に「資産」計上した、
のれん代である連結調整勘定と広告宣伝価値である長期前払費用の「減損処理」を06年3月期に行っている。
TBSは身軽だったのだ。(帝京大教授・大坪正則)