2008年に九州・山口で多発したイネの病気が、中国東部から風に乗って飛来したウンカによってもたらされた可能性が高いことを
独立行政法人・農研機構九州沖縄農業研究センター(熊本県合志市)が突き止めた。
同センターは、ウンカの飛来を予測するためにつくったシステムの完成を急いでいる。
国内では、中国から運ばれた化学物質による光化学スモッグの発生が問題になっているが、新たな“越境汚染”対策が迫られている。
08年、長崎県や山口県などでイネの葉に黄色のしまができて枯れるイネ縞(しま)葉枯病が発生した。
長崎県では稲が作付けされた水田の68%で起こり、ほとんど収穫できなかった所もあったという。
原因は、日本を含むアジア全域に生息する体長3〜4ミリのヒメトビウンカが媒介するウイルス。有効な治療剤はない。
当初は、日本のウンカが引き起こしたと考えられていた。しかし、センターが同年6月5日に
鹿児島県や長崎県で捕獲したウンカを調べたところ、ある種の殺虫剤に強い抵抗力を示した。
日本のウンカにこの殺虫剤への耐性はない。様々な調査を行った結果、
中国東部・江蘇省で捕獲されたウンカが同じ殺虫剤に抵抗力を持つことを突き止めた。
さらに、6月に捕獲したウンカについて、ウイルスを持つ個体数の比率を調べると、
日本に生息するタイプの約4%をはるかに超える約10%という結果に。江蘇省の比率は約17%で、
センター研究員は中国からの飛来説が有力と考えた。
そこで、気象図などから東シナ海上空の気流を分析。当時、江蘇省の上空を通り、日本に向かう強い西風が吹き、九州に流れ込んでいた。
このころ同省ではウンカが大量に発生しており、センターは「08年に九州などで起きた病気の一因は中国から飛来したウンカ」と結論づけた。
センターは一連の研究成果をプログラム化し、飛来予測システムを製作。システムでは09年に韓国西部への飛来が多くなると予測され、
実際の結果は予測とほぼ合致した。今年は南から北への風が強く日本には飛来しなかったとみられる。
センター難防除害虫研究チームの大塚彰主任研究員は「風に乗って飛来する害虫は、コブノメイガなど様々な種類が考えられる。
システムの精度を向上させ再来年度から運用できるようにしたい」と話している。
以下ソース:読売新聞
http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20100828-OYT1T00526.htm 飛来分布図
http://www.yomiuri.co.jp/photo/20100828-249739-1-L.jpg ヒメトビウンカ=九州沖縄農業研究センター提供
http://www.yomiuri.co.jp/photo/20100828-249773-1-L.jpg