<パキスタン>洪水1カ月 地雷や爆弾が河川に大量流出
【ニューデリー栗田慎一】建国史上最悪の洪水被害から1カ月となったパキスタン北西部で、国軍と戦闘を続ける武装勢力が
埋設したとみられる地雷や手製爆弾、砲弾がはんらんした河川に大量に流出した。米国主導の「対テロ」戦が続く同国だが、
大半の国民には地雷被害を回避する知識はない。水害によって拡散した地雷は、遅れている救援活動をさらに遅らせ、水が
引いても新たな「戦争被害」を招く恐れがある。
水害被害が深刻なカイバル・パクトゥンクワ州の警察によると、インダス川が決壊した州南部デライスマイルハーンで9日、
土砂に埋もれていた物体を男児3人が触れた途端、爆発した。3人は手の指を失うなどの大けがをした。
数日前にも同じ地域で60歳代の女性が水の引いた畑を歩いている時に突然爆発。足を切断するなどした。
いずれも地雷被害とみられ、パキスタンで医療活動を続ける赤十字国際委員会(ICRC)は、「流れついた地雷で流域の人々の
命が危険にさらされている」と警告。地雷被害が「洪水の二次被害」として急浮上した。
地雷は、米国の圧力を受けたパキスタンが武装勢力掃討作戦を始めた02年以降、武装勢力側がアフガニスタン国境の支配域
周辺に埋めたとみられ、推定数万個。インドと領有権を争う北部カシミールの境界付近にも大量の地雷が埋まっているとされる。
デライスマイルハーンで相次いだ爆発は、河川を通って地雷が運ばれてきたことを証明しており、同州政府の救援当局者は「水が
引いても農地が地雷原になっているかもしれない。これは戦争の弊害だ」と訴えた。
こうした中、ザルダリ大統領が深刻な被害が出ているさなかに欧州を外遊したこともあり、政府の救援活動の遅れは国民の
反政府感情を決定的にし、05年のパキスタン地震の時に多くの国民が寄付した政府の「災害被災者救援基金」には今回、寄付者が
いない状態。半面、掃討作戦の即時中止と対話解決を求めるイスラム勢力の基金には寄付が集まっており、被災者への炊き出しなどを
通じて影響力を高めている。
8月25日10時35分配信 毎日新聞
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20100825-00000017-mai-int