◆地下水、「満タン」戻った 渇水対策や企業誘致に活用へ
かつては地盤沈下の原因になるほどくみ上げすぎた地下水が、利用を規制していたこの半世紀ほどの間に十分た
まってきたとして、国土交通省は地下水を「水源」として活用するための研究を始めた。再び地盤沈下が起きないよう
に管理しながら利用するための「指南書」をつくり、自治体の渇水対策や企業誘致に役立てたい考えだ。
国交省は今夏から、地盤沈下が続いてきた関東平野、濃尾平野、筑後・佐賀平野で、それぞれ5〜10カ所程度の
監視井戸を対象に水位や地盤変動の解析を始めた。取水と地盤沈下の関係などを調べ、2年ほどかけて、地下水の
採取制限の目安など「地下水の管理基準」を作る。地盤沈下が起きないように管理しながら地下水を活用する方法を
まとめ、全国の自治体などに配るという。
自治体や企業が一定の規模の地下水を使えるようになれば、瀬戸内海沿岸など渇水が起きやすい地域で非常用の
水源にしたり、工場を誘致する際の「呼び水」にしたりすることが可能になる。
規制から積極活用へ転換するのは、地下水量が増えてきたからだ。国交省によると、地下水を取りすぎて各地で地
盤沈下が起きた1950年代以降、国や自治体は工業用水法や条例により、井戸の深さや断面積で制限するなどして
取水を規制。地下水のくみ上げ量は現在、ピークだった70年の3分の1程度に減少している。その結果、徐々に地盤
沈下は収まり、地下水の水位は上昇。東京都では水位が数十メートル回復するなど「この半世紀で地下水という『貯
金』がたまり、元に戻った状態」(国交省水資源政策課)という。
ただ地域差があり、現在も地盤沈下が続いているところもある。今回は地盤沈下が沈静化している地域や地下水を
使用していない自治体に、利用を提案するのが狙いだ。
国内で雨や雪から地下にしみ込む水の量は年間1400億トン、日本の地下水総量は約13兆トンに達すると推定さ
れる。水がたまった巨大な器のような「地下水盆」が関東平野や新潟平野など主なもので約60ある。しかし現在、国
内で使われる地下水は年間約120億トンで、水の使用量全体の1割程度にすぎない。
水資源政策課は「再び地盤沈下を起こさないためにも、規制緩和には難しい問題が残るが、管理手法を確立して活
用の可能性を広げたい」としている。
研究所レベルでは地下水管理の先端的な取り組みも進んでいる。独立行政法人・産業技術総合研究所(茨城県つく
ば市)は、地下水の流れを人為的に変えたり、常に15度程度と安定している地下水の熱を活用したりする技術も開発
した。同研究所地下水研究グループの丸井敦尚・グループ長は「現状は自然の地下水位に戻った状態。技術情報に
基づき、研究所としても地域にあった地下水予測などを提供していきたい」と話している。(鳴澤大)
ソース:asahi.com(朝日新聞) 2010/08/20 13:33
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