フランスで冬の味覚として有名な養殖カキが、同国で全滅の危機にひんしている。
ウイルスが原因とされる病気で3年前から養殖地で幼年カキが死滅し続けているからだ。
9割が死滅した養殖場もあり、仏の研究所では養殖品種をウイルス耐性があるとされる日本産のカキに代えることも検討している。
仏政府は、打撃を受けた養殖業者への1億5000万ユーロ(約160億円)の援助も決めた。
「これを見てくれ」。仏大西洋岸の町ラロシェル。海沿いのカキ養殖場で養殖団体の幹部、ルジュビュ氏が話した。
手には養殖袋から取り出した生後1年のカキ(長さ2〜3センチ)の貝殻の山。「みなウイルスにやられた」。同氏が悲しい顔をした。
被害は08年以降、カキ産地として有名な仏大西洋岸で発生した。カキは生後3〜4年で出荷されるが、
毎年夏に生後1年目の40〜90%が死滅し続けた。哺乳(ほにゅう)類に有効なワクチンもカキには使えず、抜本的な対策はないという。
だが、ウイルス自体は太古から存在している。なぜ今になって大量死が始まったかはナゾのままだが、
最近、増産のための品種改良が原因との見方が有力視され始めた。
フランスでは60年代に太平洋産のカキを導入したが、数年前に品種改良で、通常の4年より1年早く出荷できる新種カキが開発された。
新種は、出荷が早まるだけでなく、夏でも食べられるため養殖が広まった。だが、
新種カキが導入されたのと同時期にウイルスによる被害が発生し始めたという。
被害はアイルランドやモロッコでも出ている。仏の生産地は、専門家に調査を依頼しており、今秋にも結果が出るが、このままでは
今冬のカキシーズンに仏でカキが枯渇する可能性がある。また、仏で約5000のカキ養殖業者の4割が今後、倒産するとの見方も出ている。
仏海洋開発研究所のコシュネッツ研究員は「今年に入り被害が拡大しており、今後はウイルス耐性の強いカキを養殖対象として
選ぶなどの方法しかないだろう。新型カキがウイルスに弱いという見方もあるが、それが大量死の原因かどうかはわかっていない」と話している。
以下ソース:毎日新聞
http://mainichi.jp/select/world/news/20100817k0000e030038000c.html 死滅した生後1年のカキを手にするカキ養殖団体幹部、ルジュビュ氏
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