イランの政界やマスコミは、国際社会の制裁を非難する際、通常は「米国」だけに言及する。
制裁に同調した国全体を非難する際には、国を名指しせず、「米国とその同盟国」とか「西側国家」という表現を使う。
しかし、イランは最近、制裁をめぐる政府発言や報道で、韓国を名指しし始めた。
イラン議会のソロウリ議員は10日、「われわれは他国、特に韓国に対し、
国益を米国に合わせようとしないよう警告する。イランの巨大な市場を失うことになる」と述べた。
ラヒミ第一副大統領も「イラン市場で商品を売りながら、米国の制裁に同調する国がある。
韓国もそうだ。罰を受けるべきだ」との趣旨の発言を行った。
イランが韓国を名指しして非難する理由は三つある。
まず、韓国は国連決議と米国の包括的イラン制裁法による制裁のほか、
独自の制裁方針をまだ固めていないことが挙げられる。国連決議は加盟国ならば履行義務がある。
米国のイラン制裁法による不利益を受けないためには、関連法が指定したイランの企業や金融機関との取引を避けなければならない。
対イラン制裁に対する国連安保理決議の採決で反対票を投じたブラジルは10日、「気は引けるが」としつつも、結局は決議に署名した。
しかし、国家レベルでも対イランはそうした国際的な制裁とは異なる。
米国の友好国のうち、欧州連合(EU)27カ国、オーストラリア、カナダ、日本など経済規模が大きい国は、
程度の差こそあれ、大半が独自の制裁方針を示した。
しかし、日本は核関連のイラン企業の資産凍結など独自制裁の体裁を整えたが、
内容的には国連決議を履行するレベルにとどまっている。イランが日本を名指ししないのはそのためだ。
韓国は米国の友好国でありながら、イランとも活発な経済関係を持つ。
しかし、イランに対する独自の制裁を決めかねており、イランに圧力をかけられる余地があると言える。
中国は国連決議に伴う制裁には加わるが、独自制裁は行わない方針だ。
第二に、米国がイランの核開発の資金ルートとみているメラト銀行ソウル支店の問題がある。
メラト銀行米国の影響力が及ばないアルメニア、トルコ以外では、韓国に唯一の支店を置いている。
米国が韓国政府にメラト銀ソウル支店の閉鎖を要求したのも、ソウル支店が韓国との取引だけでなく、
アジア全体を担当するハブの役割を果たしているとの判断からだ。
イランはソウル支店を通じ、中国、中央アジアの国々との資金決済を行っているとされる。
イランにとっては、ソウル支店への制裁は非常にデリケートな問題だ。
韓国政府は10月に米国のイラン制裁法の施行規則が発表されるのを待って、
ソウル支店に不法行為があるかどうかを判断し、閉鎖命令を下すか否かを決める構えだ。
最後に、イランが韓国を重要な貿易相手国と位置づけているため、圧力を強化しているとの見方もある。
韓国政府当局者は「3カ国にしか支店を持たないメラト銀が、ソウルに支店を置いているのは、
韓国との貿易を重視しているからだ」と指摘した。
当局者は韓国の一部メディアが「米国か、イランか」という二者択一を迫られていると指摘したことについて、
韓国がイランの論理的助言者としての役割を果たしている側面もあると主張した。
一方、日本のトヨタ自動車は同日、国際社会の制裁の動きを受け、
6月からイランに対する自動車輸出を無期限で中断したと発表した。
しかし、トヨタの輸出中断を制裁の一環とみることはできない。
トヨタは2008年に約4000台に輸出したが、昨年は経済危機で輸出台数が246台に落ち込み、
今年1−5月はわずか222台を輸出しただけだった。
昨年米国で177万台を売り上げたのに比べれば、規模ははるかに小さい。
表向きは制裁だが、イランに与える打撃はほとんどない。
ソース 朝鮮日報 2010/08/12
http://www.chosunonline.com/news/20100812000027 http://www.chosunonline.com/news/20100812000028