◆【政治部デスクの斜め書き】 「総括」という名の集団リンチ この嵐が吹き始めると…
「歴史的」と自賛した政権交代から10カ月余り。もはや今の民主党に当時の輝きは見いだせない。党所属議員の怒りと
困惑、そして狼狽の表情。はて、どこかで見たような気がするな…。そう、落城前夜の自民党政権とそっくりではないか。
自民党の政権からの転落は、平成19年の参院選大敗北に始まった。これで衆参両院は大きくねじれ、その後の自民党政
権は民主党の攻勢に苦しめられることになるのだが、安倍晋三首相(当時)を追い詰めたのは野党ではなく自民党だった。
反主流派は参院選の敗因について激しく「総括」を迫り、前任の小泉純一郎首相が敷いた構造改革路線までもやり玉に挙
がった。小泉氏の「郵政解散」で政治生命をつないだのは一体誰だったのか。「若手のホープ」だった安倍氏の人気にあや
かろうと総裁選に担ぎ出したのは一体誰だったのか。まったく自民党内の理解不能な「魔女狩り」は結局、安倍氏が病に倒
れ、退陣するまで収まることはなかった。
次の福田康夫首相はなかなか嗅覚が鋭く、不穏な空気を察知すると「あなたとは違うんです!」と捨て台詞を吐いて唐突
に退陣し、難を逃れたが、後を継いだ麻生太郎首相は哀れだった。衆院任期がぎりぎりに迫る中、両院議員総会での「総
括」を求められ、所属議員を前に頭を下げた。その後自民党は歴史的大敗を喫したが、麻生氏のせいなのか。それとも個々
の自民党議員のせいなのか。
今は亡き中川昭一元財務相が当時、怒りに震えながら吐いた言葉が忘れられない。
「総括ってなんだ。自分たちが選んだ総裁に自己批判しろって言うのか。そりゃ自己否定じゃないか。何の意味があるん
だ。そもそもいつから自民党は左翼政党になったんだ!」
「大辞泉」(小学館)によると、「総括」とは、「(1)個々のものを一つにまとめること。全体をまとめて締めくくる
こと(2)労働運動や政治運動でそれまでの活動の内容・成果などを評価・反省すること」−とある。永田町の「総括」は
明らかに(2)の方だろう。
かつて連合赤軍は「総括」と称して凄惨な私刑(集団リンチ)を行い、多くの犠牲者を出した。永田町の総括も基本的に
この集団リンチと変らない。つい先日まで礼賛し、こびへつらっていた相手を親の敵のごとく突き上げる。どんなに自己批
判しようが謝罪しようが、容赦せず、倒れるまでいたぶり続ける。
あまりに惨く、あまりに醜い。この醜態を世間にさらけ出せば、国会議員への尊敬や敬愛の念が消えるのは当たり前だろ
う。こうして自民党の権威は地に堕ちていった。
>>2以降に続きます。
ソース:産経ニュース(産経新聞) 2010/08/01 18:00
http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/100801/plc1008011801007-n1.htm