再生医療への応用が期待されるヒトの万能細胞「人工多能性幹(iPS)細胞」を
作る際、作製効率を上げるとともに、がん化の危険性も下げることができる遺伝子
が見つかった。
京都大の山中伸弥教授や中川誠人講師らが26日までに発見した。米科学アカデミ
ー紀要電子版に発表する。臨床応用の実現にまた一歩近づいたと期待される。
iPS細胞は増殖能力が高く、身体のあらゆる細胞に変わる。将来、難病患者自身
の細胞からiPS細胞を作り、必要な細胞に変えて患部に移植すれば、免疫拒絶反
応なしに治療ができる。
山中教授らが2006年、世界で初めてiPS細胞を作った際は、皮膚細胞に4種
類の遺伝子をレトロウイルスを使って導入する方法だった。このうちの「c−My
c」遺伝子は、作製に使うと効率が上がるが、マウスの実験では移植後にがん化を
引き起こす「もろ刃の剣」だった。
このため、山中教授らはc−Mycとよく似たDNA塩基配列を持つ「L−Myc」
遺伝子に注目。
L−Myc遺伝子を使うと、C−Myc遺伝子を使う場合より、ヒトiPS細胞の
作製効率が上がるほか、マウスの2年間の経過観察でがんがほとんどできないこと
を確認した。
中川講師は「腫瘍(しゅよう)ができてしまう壁を乗り越えたのは大きなインパク
ト。L−Mycはほかの研究機関の評価でもいいということになれば、スタンダー
ドな作製法になっていくと思う」と話している。
http://www.jiji.com/jc/c?g=soc_30&k=2010072700092