http://mytown.asahi.com/tochigi/k_img_render.php?k_id=09000001006090002&o_id=2517&type=kiji 大田原市黒羽向町の足利銀行黒羽支店のロビーで「花風景」と題した写真展が開かれている。
ヤマユリやアジサイなど四つ切りワイドが10枚。
わきには「写真を通し心の安らぎと和みのひとときを――」などのメッセージも添えられている。
撮ったのは大田原市の理容業須藤光男さん(59)。1999年のリンチ殺人事件で長男正和さん(当時19)を失った父親だ。
正和さんが殺害された後、須藤さんは悲しみを抱えながら、
県警の捜査怠慢などを主張した損害賠償訴訟に時間を費やした。
2002年には妻も亡くなり、つらい日々が続いた。
以来、ひとり暮らしだが、店の休みに、「気が紛れるから」と、
かつて妻と一緒に出かけた福島や茨城などを、ひとりでドライブするようになった。
5年ほど前、名もない滝に心癒やされ、インスタントカメラのシャッターを切ったのが、写真を始めたきっかけだ。
撮影の仕方はインターネットや本を見て独学した。現在はデジタル、フィルムを合わせて3台のカメラを持つ。
写真展は今月1日から7月12日までの予定で始まった。
同市をはじめ、那珂川町や県外で1年半ほどの間に写したものだ。
期間中、作品を2回入れ替えて計30枚を展示。滝や鳥、同市内の山から写した富士山などの風景もある。
普段気づかない道ばたの雑草や野草の写真が好きという。将来は写真集を出版するのが夢だ。
正和さんは、生きていれば30歳。同じ年頃の男性を見ると、せつないという。
加害者への怒りや憎しみ、最愛の肉親を奪われた悲しみが癒えることはないという。
「安らぎを感じてくれれば」。そんな思いを込めた作品だ。写真は「心の切り替えの場」なのかも知れない。
(人見正秋)
ソース 朝日新聞 2010年06月10日
http://mytown.asahi.com/tochigi/news.php?k_id=09000001006090002