2009年、小惑星が木星に衝突した。そして今年も、この巨大ガス惑星でまた新たな衝突が起こった。
2009年の衝突では、隕石が木星の大気を貫通して地表に衝突した際についた木星の表面の黒い染みが
アマチュア天文家らによって観測された。今回は、オーストラリアのアンソニー・ウェスリー氏と
フィリピンのクリストファー・ゴー氏の2人が衝突の瞬間を写真と動画で撮影した。この写真と動画には、
地球と同じくらいの大きさの火の玉が木星の大気から立ち昇ったときの明るい閃光が捉えられている。
閃光が発生したのはアメリカ東部標準時2010年6月3日午後4時31分のことだ。
「このデータは優秀さでは定評のある2人のアマチュア天文家によって別々に確認されたもので、その内容に
誤りはないものと思われる。この閃光は明らかに、木星の大気に隕石が突入して“火球”となった時に見られる
特徴をすべて備えている」と、コロラド州ボルダーにある宇宙科学研究所のハイディ・ハメル氏は評価する。
今回の衝突が起きたのは、ハメル氏の研究チームが2009年の衝突に関する最新の写真と分析結果を発表
したのと偶然にも同じ日だった。発表された研究によれば、2009年の衝突は直径約500メートルの小惑星に
よるものだったという。科学者たちは現在、先を争うようにプロやアマチュアの天文家に連絡を取り、
木星に天体望遠鏡を向けるよう依頼している。今回の衝突によってどのような痕跡が残されるのかを観測し、
可能ならば、どのような物体が衝突したのかまで確認しようというわけだ。今回の衝突によって、前回衝突した
場所と同じように残骸が集まった色の暗い領域が木星の雲の中にできるはずで、今後数日間は観測できる
可能性があると考えられている。
「今回の衝突は小規模だったようなので、色の暗い領域がまだあるかどうかはわからない。世界最大級の
望遠鏡やハッブル宇宙望遠鏡を含む世界中の望遠鏡を総動員して、フォローアップのための観測を行おうと
しているところだ」とハメル氏は話す。
一方、これほどの短期間に2回も木星で衝突が起きたという奇妙な偶然に天文学者は頭を悩ませている。
これまでは、木星への隕石の衝突は比較的まれな現象と考えられていたからだ。2009年の衝突を除けば、
最後に確認された木星での衝突は、1994年に起きた有名なシューメーカー・レビー第9彗星の“最期”だ。
「今回の衝突が確認された当初に届いた電子メールの多くに“信じられない”という言葉が書かれていた。
天体が衝突する確率についての理解を根本的に見直す必要がある」とハメル氏は当惑している。
ソース:
http://www.nationalgeographic.co.jp/news/news_article.php?file_id=20100607002&expand 画像:2009年7月に発生した木星への隕石の衝突の跡(左)と、この跡が消える様子を捉えた一連の画像
http://www.nationalgeographic.co.jp/news/news_article_enlarge.php?file_id=20100607002