4月下旬の4日間、「事業仕分け第2弾」が行われました。今回は独立行政法人の事業が対象でした。
昨年の「事業仕分け」は、確かに世間の目を引きはしましたが、予算削減額は8000億円前後にとどまり、目標の「3兆円」には遠く
及びませんでした。その結果、今年度予算は莫大(ばくだい)な借金と「埋蔵金」頼みの予算編成となってしまいました。
◆大山鳴動してわずか52億円
今回の「仕分け」は、結果からいうと、昨年以上に散々な結果となりました。
「仕分け」の対象となったのは47独立行政法人の148事業。そのうち36事業が、仕分け人によって「廃止」と判定されました。この数字
だけ見ると、4分の1の事業を「廃止」と判定したことになりますが、これは事業数だけの話です。
2009年度当初予算で各事業に投入された国費の金額ベースで集計すると、結果は表のようになっています。独法全体では3.4兆円
もの国費が使われていますが、「廃止」と判定された36事業の分は、合計でわずか52億円です。これは、独法に投入された国費全体の
0.15%にすぎません。
「廃止」36事業のうち、1億円以上の国費が使われているのは11事業だけ。10事業は国費ゼロです。中には、独法自身がすでに廃止を
予定している事業まで含まれていました。
◆高速道路機構への巨額国費も手付かず
その一方で、巨額の国費が投入されている事業で、まったく「仕分け」の対象からはずされているものが、かなりありました。
たとえば、「日本高速道路保有・債務返済機構」(高速道路機構)は、今回の「仕分け」対象にはなっていませんが、実は、この機構には、
いま一番多くの税金が使われているのです。
今年度予算で見ると、機構に直接投入される国費は837億円。主に、本四架橋の債務返済に充てる出資金です。さらに、これとは別に、
この間に国が肩代わりした総額3兆円の借金の元利返済のために、「国債費」として3169億円が計上されています。合わせれば4006億円
にもなるのです。これは、国際協力機構の2543億円をはるかに上回って、独立行政法人中で最大ですが、「仕分け」ではまったく「聖域」
なのです。
国が借金を肩代わりした名目は「高速料金の軽減」でしたが、昨年末の民主党の要望を受けて、料金軽減の財源の一部を新たな道路
建設に充てることを可能にする法案が国会に提出されています。ところが、そうすると料金が「値上げ」になってしまうので、またまた民主党から
クレームがつき、混乱を続けています。高速道路上で逆走・迷走するかのような、いいかげんな税金の使い方こそ、きちんと「仕分け」すべきでは
ないでしょうか。
◆「もんじゅ」も聖域?
1995年にナトリウム漏れ・火災事故を起こして停止していた高速増殖炉「もんじゅ」が、運転を再開しましたが、再開直後にも検出器が
故障するなど、不安が続いています。この危険で経済的にも見通しの立たない事業も、「仕分け」の対象になっていません。
「もんじゅ」を所管する独立行政法人「日本原子力研究開発機構」には、1848億円の国費が使われていますが、今回の「仕分け」で議論
になったのは、そのうち6.8億円だけ。「研究施設の一部が地価の高い東京都内に置かれているのは無駄だ」というようなことだけでした。
本当にメスを入れなければならない事業を「聖域」とした「事業仕分け」では、「選挙目当ての政治ショー」という批判をまぬがれないでしょう。
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【プロフィル】小池晃
こいけ・あきら 1960年、東京都出身。東北大学医学部医学科卒。東京勤労者医療会代々木病院などを経て98年参議院選挙
(比例区)で当選。現在は日本共産党政策委員長、参議院厚生労働委員会委員などを務める。著書に「どうする 日本の年金」(新日本
出版社)など。
ソース(ビジネスアイ)
http://www.sankeibiz.jp/macro/news/100517/mca1005170501004-n1.htm