■きょう開講1期生は14人
「なぜ外国人には不就学児が多いのか」「負傷の程度で治療や搬送の優先度を決める『トリアージ』は、
国籍が多岐にわたる中ではどう扱うのか」 ――。群馬大学と県が今年度から養成する「多文化共生推進士」は、
多様な文化が出合う社会で起きる問題を、様々な角度から分析して解決に導く役割を担う。
群馬大が3年かけて人材を育成し、県が推進士に認定して活動の場を提供する
「官学連携」のプログラムだ。9日、1期生14人の開講式が行われる。
群馬大と県は、外国人が多く住む地区の課題に連携して取り組んできたが、本格的な人材育成は初めてだ。
「外国人との共生」「異文化理解」などをテーマにしたワークショップ(実技講習)や講演は多いものの、
群馬大教育学部の結城恵教授は「いずれも短期間で終わっており、効果は未知数だった」と指摘する。
結城教授が中心となり、群馬大は昨年、文部科学省の科学技術振興調整費の事業にプログラムを申請。
外国籍の住民を多く抱える群馬特有の課題に全4学部を挙げて取り組むとした提案は、
医療や工学分野が多い中で異例の採択となった。
県内の社会人38人の応募者から選ばれた1期生は、会社員や看護師など様々な職業の14人。
ブラジル国籍の人もいる。分析、企画、実践力を養成する全3コースで、各70時間を3年間をかけて履修する。
計210単位を取得し修了証を得ると、推進士に認定される。その後は、県の地域再生策の立案や実践にかかわったり、
地域で共生社会の核作りの一翼を担ったりする。
社会人の14人が学びやすいように、講義は群馬大で平日夜と週末に行う。6月からは日曜も開講し、
一般学生が共に履修できるようにする。県国際課は「共生は、将来的には群馬だけでなく日本全体でも課題となる。
初の試みだけに、今後の評価は1期生にかかっている」と期待をかける。
結城教授は「単なる『外国人支援』ではなく、高齢者、障害者など、社会の様々な集団の共生という
広い視点から考えていきたい」と意気込んでいる。
読売新聞 2010年5月9日
http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/gunma/news/20100509-OYT8T00029.htm