◇医療、行政が連携…啓発活動に本腰
医療、行政機関が連携してアルコール依存症患者を早期に発見するため、四日市市内の3病院と四日市医師会、
四日市市保健所などが「四日市アルコールと健康を考えるネットワーク」を結成した。
今月から活動が本格的になり、啓発用のポスターやパンフレットを通して、飲酒量をコントロールできない人たちに
精神科での受診を勧める。同ネットワークによると、医療や行政の関係機関が連携して依存症の啓発活動をするケースは、
全国でも珍しいという。
ネットワークの中心となっているのは、県立総合医療センター、市立四日市病院、四日市社会保険病院。内科、外科、
整形外科などの医師たちは、飲酒量が増えて肝臓を患ったり、酔って転倒したりして受診する患者と接する機会が多く、
対応に苦慮することもある。
ネットワークの一員で、依存症治療を行う「かすみがうらクリニック」(四日市市)の猪野亜朗医師によると、依存症が疑われるものの、
精神科の受診を拒む患者は少なくない。ネットワークでは、依存症患者が一般外来や救急外来を訪れる機会を利用して、
専門的な治療につなげる作戦を展開する。
同医師会は、啓発用のポスター800部、アルコール依存症のチェックシート1万部の製作費用を負担。同保健所は今年度予算で、
住民向けと医療従事者向けのパンフレット計8000部を作った。
ポスターとチェックシートは四日市市や菰野町、朝日町、川越町の全医療機関に配られる。ポスターは待合室に張り出し、
チェックシートは一般、救急外来を訪れた患者や家族に医師が手渡す。パンフレットは依存症の疑いがある患者や、
専門医以外のすべての医師に配布する。
ネットワーク代表を務める総合医療センターの高瀬幸次郎院長(内科医)は、「依存症患者が内科を受診しても、
専門知識のない医師が採血して肝臓を診て、そのまま帰してしまうケースも少なくない。自殺やうつはアルコール依存症との関連が強く、
勤務医と開業医、一般医と専門医、医療と行政が連携することには大きな意義がある」と期待している。
(上村香代)
読売新聞 2010年4月23日
http://www.yomidr.yomiuri.co.jp/page.jsp?id=23964