★【日々是世界】ファストフードに“非健康税”? 馬総統 求心力回復へ窮余の策
台湾の馬英九政権が、世界初となる「ジャンクフード税」を導入する方針を打ち出し、
台湾で使われる漢字表記の「正体字」を世界文化遺産として申請する準備に入った。
支持低迷に苦しむ馬政権としては、健康や独自文化を守る住民本位の姿勢を打ち出し、
批判の矛先をかわす狙いがあろう。だが、5月に一期目の折り返し点を迎える
馬英九(ばえいきゅう)総統(59)は昨夏以降、急速に求心力を失い、
政権よりのメディアも「無能無策ぶりを露呈」(中国時報)といらだちを隠せず、
政局は混とんとしたままだ。
●ジャンクフード税
台湾の保健当局は昨年12月、住民の食習慣の改善などを目指すとして、
ファストフードなど「非健康的」と分類される食品に特別税を課す法案の草案作りに入った。
台湾で発行される日刊紙、蘋果(りんご)日報(電子版)によれば、課税対象となるのは、
糖分を多く含む飲料やケーキなどで、年内に立法院(国会)に提出され、早ければ来年から実施されるという。
台湾でも近年、健康ブームが高まりをみせ、馬総統自身も趣味のジョギングで健康をアピール。
健康重視の政策は環境問題に並び、政権の看板的存在となっている。
ところが、経済発展の中で台湾でも、運動不足や偏食などに起因する肥満問題は深刻化している。
医療関係者の調査によれば、台湾の子供の4人に1人が「肥満」または「病的に肥満」と診断され、
こうした児童の割合は6%だった10年前に比べ、現在は25%と急増しているという。
こうした社会事情を踏まえて馬政権は、税制改正で食生活の改善と肥満率の低下を図り、
住民の支持を得ようというわけだ。
保健当局はさらに、母親が赤ちゃんに授乳する権利を守る法案作りにも着手。
台湾のテレビ局、TVBS(電子版)が12月29日に伝えたところによると、法案が立法院で承認されれば、
授乳行為を妨げた者は最高で3万元(約8万7000円)の罰金を科されることになる。
●「中華文化の保存」
一方、馬総統は12月26日に開かれた国際シンポジウムで、台湾で使われる伝統的な
「正体字」を国連の世界遺産に申請するよう行政院(内閣)に指示したことを明らかにした。
台湾各紙によれば、総統は席上、「言語は文化を決定づけ、文化は民族を決定づける」と発言。
正体字を排して簡体字に移行した中国と、台湾の文化的相違を強調した。
また「台湾は中華文化の保存という重大な責務を負っている」と述べ、
世界遺産への指定を目指すことで台湾の独自性を維持する姿勢をにじませた。
住民生活を重視する施策や、台湾の主体性の堅持を求める世論への配慮は、
昨年夏に台湾を襲った台風被害への対応の遅れが批判され、また12月上旬に行われた
統一地方選における与党・中国国民党の後退を受け、主導権を握り返すための総統の戦術だろう。
●与党からも突き上げ
しかし、馬総統は昨年10月から党主席を兼務し、党内基盤を固めようとしているが、求心力の低下は否めない。
その好例は馬政権が一気に押し進めようとした米国産牛肉の輸入解禁問題だろう。
政権は10月、米国との間で解禁にむけた合意議定書を交わしたが、一方的なやり方に立法院が反発。
議席の7割を締める国民党の立法委員もが反旗を翻し、年明けの5日、
内蔵など米国産牛肉の輸入規制を再強化する修正案を与野党一致で可決してしまった。
当局間合意をほごにされた格好の米国の通商代表部(USTR)と農務省は5日、
共同声明で「科学的な判断より政治を優先させた決定だ」と痛烈に批判。
米国と貿易投資枠組み協定(TIFA)の締結を目指す政権は当初、輸入解禁を契機に
対米関係の強化を図ろうとしたが、おひざ元の国民党内から突き上げを食らい、
馬総統は改めてリーダーシップ不足を内外にさらす結果となった。
産經新聞
http://sankei.jp.msn.com/world/china/100110/chn1001100701001-c.htm