★政治家は「炎上」で鍛えられるべき--ネット選挙活動の解禁に動く与野党の思い
民主党は次の国会で、選挙活動におけるインターネットの利用を解禁すべく
公職選挙法の改正案を出す方針だ。与野党それぞれのネット解禁に対する考えを聞いた。
2009年、最も大きな出来事の1つが自由民主党(自民党)から民主党への政権交代だ。
この流れを受けて本格的に動き出しているのが、選挙活動におけるインターネット利用の解禁だ。
現在の公職選挙法ではインターネットを利用した選挙期間中の活動について、明確な記載はない。
ただ、ホームページなどはポスターやビラと同じ扱い(文書図画にあたる)となり、
これを更新することは公職選挙法違反になるとされてきた。
ただ、そもそも公職選挙法は1950年にできた法律。その骨格ができたのは1925年にさかのぼる。
公職選挙法の理念や意義は尊重しつつも、より現代に合う形に変え、インターネットを使って
選挙活動ができるようにしよう――そんな試みが、民主党、自民党の若手議員を中心に広がっている。
2009年12月18日に東京都内で開催された特定非営利活動法人 情報通信政策フォーラム主催の
セミナーでは、民主党 衆議院議員の高井崇志氏や自民党 前衆議院議員の片山さつき氏、
かつて民主党で衆議院議員を務め、その後ソフトバンク社長室長に転身した嶋聡氏らが登場し、
ネット上の選挙活動の解禁に向けた公職選挙法の改正について議論した。
●公職選挙法の趣旨は「お金持ちが有利にならない」こと
文書図画の頒布について定めた公職選挙法の142条では、選挙期間中に配れる
ビラの枚数や掲示できるポスターの種類などが細かく規定されている。
「こんなに選挙活動を縛る法律は先進国でもあまりない」(高井氏)というほどだ。
しかし、そもそもは資金力のある人が有利にならないように、枚数などに制限をかけるという
趣旨で生まれたものだった。しかし施行から60年後の今、公職選挙法はお金がなくても
インターネットを使って自らの主張を多くの人に届けたいと願う候補者の足かせになってしまっている。
「サイトを更新するのにお金はかからない。これは公職選挙法の趣旨に合致する」(高井氏)
ネット解禁が進まない背景には、「ネットが本当に票に結びつくのか、
議員が疑問に思っている」(嶋氏)という現実がある。
「ネットで意見を述べるより、『ビートたけしのTVタックル』に1回出演したほうが効く。これは事実。
ネットによるプラス面より、誹謗中傷されるなどマイナス面への懸念のほうが大きい」(嶋氏)
テレビを通じて政策を訴えることも重要だが、「テレビ政治では、有権者は情報を受信するのみ。
これでは見識ある市民というより、どう情報発信をしたら動くかという情報発信者の想定通りの
市民になってしまう。それで民主主義が成り立つか?」と嶋氏は警鐘を鳴らす。
特に選挙期間は、有権者が誰に投票するかを最終的に決める重要な時期だ。
「投票者の3割は投票日3日前に投票相手を決めるという調査結果もある。
有権者が最も政治について考えるこの期間にこそ、ネットを使えるようにして欲しい」(嶋氏)
嶋氏自身、議員職を離れて初めて、平日などに開かれる政治家の集会に行くのは難しいと感じたという。
「今日これから来て下さいと言われても、行きたいけど行けない。
それがネットで見られるようになれば、有権者の選択の幅も広がるし、
しっかり考えた上で投票するようになるだろう」(嶋氏) 続く
CNET Japan
http://japan.cnet.com/print/0,2000080637,20406318,00.htm 記事の続きは
>>2-4 >>1の続き
●次の国会で民主党が法案提出へ
公職選挙法の改正案は民主党、自民党ともに議論しているところだが、その内容は若干異なる。
民主党の場合、選挙運動に使うネットサービスに特に制限を設けない。
「サービスを限定した方がいいのではという話もあったが、どんどん新しい技術が出てくると、
法改正では追いつかない」(高井氏)というのがその理由だ。
このため、立候補者の公式サイトだけでなく、YouTubeやSecond Lifeといった
サービスの利用も視野にいれている。メールの利用についても解禁する考えだ。
このほか、選挙期間中の戸別訪問の解禁なども盛り込んだ上で、1月18日に招集される
予定の次の通常国会で法案を提出し、7月の参議院選挙に間に合わせたいと高井氏は話す。
一方の自民党も、選挙制度調査会で選挙のネット解禁について議論していた。
片山氏は「自民党がネット解禁に消極的だったのは事実」としながらも、
「選挙の情報源として、ネットが発展することはあっても後退することはない。
お金がかからないツールという認識だ」と語る。
最大の懸案は、誹謗中傷やなりすましへの対応だという。
このため、メールアドレスの表示義務を盛り込むことに加えて、
氏名等の虚偽表示罪(公職選挙法第235条)、選挙の自由妨害罪(同第225条)を見直して
ネット上の行為も対象に入れ、違法行為として罰せられるようにしなければならないとした。
自民党案は民主党案よりも保守的で、選挙活動に利用できるネットサービスは候補者の
ホームページに限定し、ホームページの作成費用は選挙運動費用に算入することで、
一定金額内に収める。また、メールによる選挙運動は引き続き禁止する。
これはメールの場合大量になりすましができてしまうことなどを懸念しているためだという。
ただ、片山氏は「個人的にはメール利用の一部解禁やメールマガジンの利用などは
認めてもいいのではないか」と話す。Twitterについても、普段から利用していることもあり、
「2ちゃんねるなどに比べて、クレイジーな“炎上”があまりない。
こういったものなら、ある程度解禁してもいいのではないかという気がする。
個人のアカウント設定のところで、何かしらの網をかけられないのか」と積極的な姿勢を見せた。
片山氏はTwitterを通じた議論に手応えを感じているようだ。
「Twitterを始めて1カ月ほどだが、テーマと時間帯を選べば1時間以内に50件程度の
反応が来るような議論ができる。政治活動をする上でこういう場を持っていないといけないと思うし、
もっと前からやっていたら違ったかもしれないとも思う。
(ほかのTwitterユーザーに)『こんなに喋りやすい人だとは思わなかった』と言われた。
世間には自分の意見を言いたい人がいる。
双方向性メディアを取り入れることが今からでも非常に重要であり、
うまく使ったところが次の選挙では勝てるのでは」とした。
しかし、自民党内ではネット解禁に積極的な人とそうでない人の差が大きいようで、
「年齢的にITリテラシの低い人が意思決定者に多い」(片山氏)と苦汁の表情を浮かべる一幕もあった。
両党の意見を聞いた嶋氏からは、「ネット解禁は与野党が一緒になってやって欲しい」の意見が出た。
多数決では、どうしても与党に有利なものになってしまうからだ。
これに対して片山氏は「自民党が足を引っ張ったということであれば、それ自体がマイナスになる」
とネット解禁を推進していく考えを示した。ただ、党としてはまだ明確な立場が決まっていないとのこと。
一方、高井氏も「ネットの解禁で浮動票を取る人が有利になると、
固定した地盤や強固な応援会を持っている人にとっては不利になる。
それは与野党ともに反対する可能性があり、民主党でも反対する勢力はあるだろう」とし、
与野党の対立というよりも、新旧世代の対立になる可能性を示唆した。
また、ネット上の“炎上”を懸念する声に対して、嶋氏は「炎上するような発言した人は
その場で鍛えられるべき。そうでないと外交の場で戦えない」(嶋氏)と断言し、ネットは政治家を鍛える場にもなると期待を寄せていた。
以上