◇方広会:塔頭住職試験「竪義」に27歳僧侶−−奈良・東大寺法華堂 /奈良
◇「得たり」「未判」 夜の堂内、緊迫の3問
奈良市の東大寺法華堂で16日夜、平安時代から続く伝統の法会「方広会(ほうごえ)」があった。
寺の塔頭(たっちゅう)住職になるための資格試験「竪義(りゅうぎ)」で、龍松院徒弟の
筒井英賢(えいけん)さん(27)が約3時間に及ぶ厳しい問答に挑んだ。
寺の許可を得てその様子を聴聞した。
受験する僧は竪者(りっしゃ)と呼ばれる。かつては合格できなければ学僧としての
人生が閉ざされる重要な試験だった。現在は儀式化し、経本を読み上げるだけだが、
読み方や節回しを間違えずに読むためには練習が必要だ。筒井さんは10月から
守屋弘斎長老の下で勉強を続けてきた。先輩から経本を借りて膨大な量をすべて写し取り、
当日に備えた。
法会は午後6時過ぎに始まった。聴聞者は格子を隔てた礼堂で耳を澄ます。
ろうそくの明かりがともされ、本尊の不空羂索観音立像(国宝)などの
仏像が浮かび上がる。
お経の講説に続き、午後7時15分ごろ、「英賢法師、登高座(とうこうざ)、登高座」と声がかかり、
筒井さんが静かに着座した。冷え込んだ暗い堂内に緊張感が漂う。問題は3問で、
問者が問い掛けて竪者が答える。やり取りが終わると、合否を判定する精義者(せいぎしゃ)役の
上司永照・持宝院住職が、不足の部分について踏み込んだ問いを投げかける。
筒井さんが声を震わせて泣き出した。厳しい問いつめに困った様子を表現する「泣き節」だ。
延々と問答が続いた後、上司さんが「並びに得たり」と声を響かせた。1問目は「合格」だ。
2問目も同様で、3問目は「一つは得たり、一つは未判」。満点ではないが、全体でも
「合格」の判定が下った。時刻は午後10時を回っていた。
◇歴史の重み感じた−−筒井さん
「逃げ出したいほど緊張した」と言う筒井さん。東大寺の僧としての重要なステップを乗り越えた。
「まだまだ通過点だが、ほっとした」としながらも、「数知れない先輩方と同じ道を歩んでいるんだ、
という歴史の重みを感じた」と表情を引き締めた。上司さんは「これから責任の重さを感じることが多くなる。
それをかみしめながら、私たちと一緒に成長していってほしい」とエールを送る。
ソース(毎日新聞)
http://mainichi.jp/area/nara/news/20091224ddlk29040271000c.html