◇さくら浄水場訴訟、24日に2審判決 栃木
旧氏家町(現さくら市)の浄水場建設用地の購入をめぐる住民訴訟の控訴審判決が24日、
東京高裁で言い渡される。訴訟では、用地購入額の妥当性という本来の争点に加え、
控訴審判決直前に議会が前市長への損害賠償請求権を放棄したことの是非が争われた。
議会が請求権を放棄することには、「住民訴訟の意義をないがしろにしている」との批判もあり、
高裁の判断が注目される。
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訴訟は、浄水場建設用地の購入額が高すぎるとして、市を相手取り、当時の
町長の前市長に1億2千万円の返還を請求するように求めている。
1審宇都宮地裁判決は市が敗訴。2審判決は9月末の予定だった。
事態が動いたのは判決直前の9月1日。市議会が前市長への損害賠償の
請求権放棄を議決したのだ。たとえ2審で住民側が勝っても、
市は前市長に返還を求めないことになる。
議決で賛成したある市議は「近隣の土地価格などをみても価格は妥当。
水道整備の必要性からもやむを得ない判断と議会も了承していた」と
用地購入の正当性を主張したうえで、「今さら前市長だけに
責任を負わせることはできないと判断した」と説明する。
一方、原告の桜井秀美さん(55)は「前市長が賠償金を支払うかどうかではなく、
責任の所在を明確にすることが訴訟の目的。(請求権放棄は)『前市長は市のために
一生懸命やったから放棄しても仕方ない』という自分たちの論理を正当化しているだけ」と
反論する。原告代理人の米田軍平弁護士も「議決権は公益性のあるものに用いられるべきで、
個人を守るのは制度の趣旨に反している」と憤る。
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平成14年の改正地方自治法では、住民訴訟で首長を直接訴えられなくなった一方、
自治体に対して、首長への損害賠償請求を求めるように規定されている。つまり、
自治体が請求権を放棄すれば、住民訴訟自体に意味がなくなるのだ。
実際、住民訴訟の係争中に議会が請求権放棄を議決した場合、裁判所は
「請求権が消滅している」として住民の訴えを棄却するケースが多いという。
専修大学の白藤博行教授(地方自治法)は「住民訴訟は行政をチェックするために
住民に与えられた権利。係争中の請求権放棄は、住民の代表である
議会としてあるまじき行為」と問題視する。
こうした流れを11月27日の大阪高裁判決が一変させた。請求権を放棄した
神戸市議会の議決に対し「議決権の乱用で無効」との初判断を示したのだ。
白藤教授も「司法が議会の審議内容や過程にまで踏み込んで判断するという
良い方向性を示した」と評価する。
東京高裁は議会の議決をどう判断するのか。判決が注目される。
ソース(YahooJapan 産経新聞)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20091221-00000014-san-l09