北陸新幹線問題 自説を押し通すだけでは
http://www.niigata-nippo.co.jp/editorial/20091203.html このままでは県のリーダーであるはずの知事によって、県民益が損なわれることになる。そんな不安が募るばかりである。
北陸新幹線の工事認可をめぐる本県と国土交通省との対立が波紋を広げている。
沿線の富山、石川、長野の3県知事は1日に会談し、2014年度末開業に支障を来さないよう本県の泉田裕彦知事に協力を求める緊急声明を出した。
他県から本県の行政対応に注文を付けられるなど異例だ。
泉田知事の姿勢に対する、強い不満の表れだろう。
県民としては残念なことだが、3県の行動には一定の理があると考えざるを得ない。
他県の知事が事態の収拾に腐心しているにもかかわらず、負担金問題に火を付けた泉田知事からはそうした配慮が伝わってこないからだ。
1日の会談は新幹線問題に関する本県との「溝」を解消することを目的に富山県知事が呼び掛けた。
しかし、泉田知事は日程の都合がつかないとして欠席した。県交通政策局長の代理出席を求めたが、認められなかった。
知事が集まるといえば、政治的な調整の場ととらえるのが当然だ。
重要会合であることは自明のはずである。
泉田知事には事情があったのだろうが、県政トップとして意見の異なる相手と正面から向き合い、きちんと議論する姿を見せてほしかった。
泉田知事は新幹線負担金増額の情報開示の在り方などに疑問を呈し、国に説明を求めてきた。
さらに、納得いく説明がないのに前原誠司国交相が行った新規工事認可は無効として、国地方係争処理委員会に審査を申し出た。
知事の指摘にはうなずける部分がないわけではない。
ただし、これはあくまでも国と本県との間の問題であり、沿線他県への対応を一緒くたにしてしまってはおかしなことになる。
ところが、緊急声明を受けた2日の記者会見で、知事は「一方的な形で日程が設定された」「話し合いの場が失われた」と批判した。
これでは他県との溝をいっそう深めるだけだ。
泉田知事が新幹線負担金問題などを提起したのは、県民の利益にかなうと考えたからだろう。
しかし、もっと視野を広げてもらいたい。
新幹線による隣県や近県の活性化を本県の県民益につなげるような視点がほしい。
「新潟の知事のせいで北陸新幹線の開業が遅れそうだ」。
他県ではこんな見方が出始め、「新潟問題」とさえ言われている。
イメージの低下も本県にとってマイナスである。
解せないのは、国と争うという前代未聞の事態にも、行政をチェックする県議会の動きが鈍いように見受けられることだ。
2日、県議会12月定例会が始まった。
活発な質疑を望む。
新潟日報2009年12月3日