【米国】刑務所が「老人ホーム」化? 受刑者が高齢化 医療費が州の財政圧迫[091121]

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◇米刑務所が「老人ホーム」化? 受刑者の高齢化進む

ジョージア州ハードウィック(CNN) 車いすに乗った高齢者がトランプに興じ、
個室には医療用のベッドやおむつ、酸素吸入器が常備されている。老人ホームか
病院のような光景だが、ここはジョージア州男子刑務所。受刑者の高齢化が進み、
そのケアに多額の費用がつぎ込まれている。同様の傾向は全米各地の刑務所でみられ、
州当局が対応に苦慮している。

ジョージ・サンゲ受刑者(73)は妻への暴行罪で15年の刑を言い渡され、05年からこの刑務所に
収容されている。脚にまひがあるため車いすとつえが手放せず、視力はほとんど失った。
1日2回の服薬も欠かせない。所内で2度心臓発作を起こし、病院へ運び込まれた。
「ここでは皆が手を貸してくれる。とても親切にしてもらっている」――ゆっくりとした口調でそう話す。
ここは州内の刑務所の中でも高齢者が多く、中には第二次世界大戦の復員兵もいる。
最年長者は89歳だ。ほとんどすべての受刑者が、認知症や高血圧、糖尿病など
健康上の問題を抱えている。

米司法省の統計によれば、米国内の刑務所に収容されている55歳以上の男性受刑者は、
99年の4万8800人から07年には8万9900人まで増加した。高齢者人口や高齢者による
犯罪自体が増えていること、90年代に多くの州で、罪を3回重ねた被告に自動的に
終身刑を言い渡す「三振法」が導入されたことなどが要因とみられる。

これにともない、刑務所での医療費問題が表面化した。「残酷な刑罰」を禁じる合衆国憲法の下、
受刑者の医療にかかる費用は各州当局が負担するよう義務付けられ、
その総額は全米で年間約30億ドル(約2700億円)に上っている。

刑務所制度の規模で全米トップクラスに入るジョージア州では、65歳以上の受刑者にかかる
医療費が8500ドル(約75万5000円)と、65歳未満の950ドル(約8万4000円)をはるかに上回り、
州の財政を圧迫しているという。バージニアやペンシルベニアのように、医療設備や看護態勢を整えた
高齢者専用の刑務所を設けた州もある。ホスピスの機能を持つ刑務所は全米で約75カ所と、
10年前の10カ所から急増した。一部の州ではコスト削減のため、高齢の受刑者の早期釈放を進めているが、
これに対しては再犯の恐れなどを指摘する反対意見も強い。

「有刺鉄線の中の老人ホーム」とも呼ばれるジョージア州男子刑務所で、サンゲ受刑者は分厚い眼鏡越しに、
ロッカーから取り出した古い写真を見つめていた。「これはベティだな」――妻の顔と分かるまでに、
しばらく時間がかかった。なぜ暴力を振るったのか、今となっては説明できない。同受刑者は当時69歳。
前科はなく、子どもや孫にも恵まれていた。「悪いことをしたな。本当に悪かった」――写真に向かってただ何度も、
そうつぶやくばかりだ。

ソース(CNN)http://www.cnn.co.jp/usa/CNN200911210001.html