学校や公民館などで、平和や反戦を題材にした児童映画を見せる自主上映会が、岐路に立たされている。
かつては全国各地で盛んに開かれたが、良質な映画の提供を掲げた「親子映画運動」の退潮とともに、年々下火に。
復興に向けて活動を続ける関係者からは、戦争や平和を考える機会の減少を危ぶむ声が上がる。 (放送芸能部・石原真樹)
東京・国分寺で今年五〜七月の週末に計十回開かれた「親と子のよい映画をみる会」。
小学校の体育館に平均八十人の親子らが集まり、劇場とは違うリラックスした雰囲気で映画を楽しんだ。
ただ、自主上映されたのは娯楽アニメ。長年、反戦・平和をテーマに選んできた同会長の浅野富子さんは
「集客のためには娯楽モノにも頼らないと…」と寂しげだ。
親子映画運動は、一九六六年に埼玉県大宮市(現さいたま市)で四千五百人を集めた「親と子の名画劇場」がきっかけ。
性や暴力を描く邦画が急増した中、保護者や教員が「子どもに良質な映画を」と尽力し、作品を借りて上映した。
埼玉の試みは市民運動として全国に波及し、各地で自主上映会が開催。当初は民話を題材にした映画が
中心だったが、東京大空襲を描いた「猫は生きている」(七五年製作)が評判を呼んだのを機に、平和や反戦をテーマとする作品が増えた。
中でも、太平洋戦争中に米軍に撃沈された沖縄の学童疎開船の史実を描く
「対馬丸〜さようなら沖縄〜」(八二年製作)は、二百万人が見たとされる。
上映会に陰りが見え始めたのは九〇年代に入ってから。親子映画運動が隆盛だった広島県の映画配給会社に
残る資料によると、九一年六〜八月、同県内二百七十カ所で反戦・平和の児童映画が自主上映されて
七万人が足を運んだが、今年の同時期は五カ所で二千人にとどまった。
衰退について、児童映画配給元の埼玉映画文化協会代表の舟橋一良さんは、
家庭用ビデオ機の普及や娯楽の多様化に加え、「教職員組合の力が弱まり、
チラシの配布など学校で開催情報を提供できなくなったことが大きい」と話す。
「上映前に先生が原作を読んだり空襲の話をしたりと、教育の機会だった」。自主上映を続ける浅野さんは
反戦・平和を描く児童映画の復興の必要性を訴える。十一月には親交のある東京・立川の団体が平和を
考えるアニメ「チスト みどりのおやゆび」の自主上映会を予定する。
来年で四十五年目となる親子映画運動。「平和の大切さを子どもたちに伝えたい」。
活動を積み重ねてきた関係者に共通の願いだ。
画像:平和映画の自主上映会はかつて全国各地で盛んに開かれ、親子連れが長い列をつくった
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/images/PK2009092802100131_size0.jpg ソース:学校などでの自主上映 年々下火 『親子で平和映画』ピンチ:社会(TOKYO Web)
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2009092802000197.html (2009年9月28日 夕刊)