世界中の車で採用されている3点式のシートベルトを50年前に初めて開発したのが、「安全技術」を売りにするスウェーデンの自動車メーカー、
ボルボ・カーズだ。そのボルボが、来年から欧州市場に投入する新型「S60」に搭載する最新の安全技術を、産経新聞社など一部メディアに初め
て公開した。新技術は、路上に飛び出した歩行者との衝突事故を回避するため、自動的にブレーキが作動するもの。スウェーデン・イエーデボリ
市のボルボ施設で行われた試乗セミナーの様子を報告する。(鈴木正行)
セミナーに参加したのは、日本のメディア3社とモータージャーナリスト1人のほか、アメリカ、カナダ、中国、インドなどのメディア関係者。ボルボ
は2020年に自車での死傷事故ゼロを目指す「ビジョン2020」を掲げる。
ボルボは1970年に事故調査隊を組織し、地元警察や消防の協力を得て、イエーデボリ市近郊で発生したボルボ車の介在する交通事故の現場
に出向き、約4万件のデータを収集。これらを分析し、さまざまな安全技術の対策を行ってきた。その結果、3点式シートベルト、エアバッグ、対向
車両防護システムなどの「衝撃保護」技術から、一歩進んだ「衝突回避・軽減」技術にたどり着いた。
報道陣に公開された安全技術は、ノロノロ運転時の追突事故を未然に防ぐ「低速用追突回避・軽減オートブレーキシステム」と、路上に飛び出した
歩行者との衝突事故を回避するため、自動的にブレーキが作動する「フルオートブレーキ付き衝突警告システム」。
ボルボは8月下旬から日本で発売しているSUV(スポーツ用多目的車)「XC60」に、「低速用」を採用。ルームミラー前方に設置されたレーザーセン
サーで約6メートル先の前方車両との車間距離計測し、追突不可避とシステムが判断すると自動的に急ブレーキが作動する。
試乗では、XC60を時速30キロまで出した後、アクセルから足を外して障害物まで直進。「ピィピィピィ」という警告音を無視すると、自動的にブレーキ
がかかり、障害物のわずか数十センチ手前で停止した。
私は最初のトライで、アクセルを踏みすぎてしまい、30キロ以上の速度で突っ込んでしまい、見事に障害物に衝突してしまったが、それでも直前に
ブレーキがかかり追突による衝撃は軽減された。警告音でブレーキがかかることを事前に予期していることもあり、衝突による衝撃はほとんど感じな
かった。同席したボルボ関係者に「アクセルを踏みすぎですよ」とたしなめられ、2度目の挑戦では見事に成功。これなら追突事故を事前に回避でき
そうだ。
「脇見運転をしていても、たいていの人が警告音で驚いてブレーキを踏んでしまいますよ」とボルボ関係者。しかし、インドから来ていたテレビクルー
の女性は何度となく障害物にぶつかっていた。日本のモータージャーナリストは「新興国の人は車に対する礼儀を知らない」と憤っていたが、クラクション
を鳴らしまくるインドの交通事情を思い浮かべ、納得してしまった。
続いては、新型「S60」に採用される「フルオート」システム。まだ、日本への投入時期が決まっておらず、国内のボルボファンもどんなものか注目しているだろう。
「フルオート」は、走行中にカメラが進行方向にいる障害物から「人」を認識し、衝突しそうになると警告音の後、自動的に急ブレーキがかかる画期的な
システムだ。時速25キロ以下なら衝突を回避できるという。ちなみにカンガルーやイヌなどの動物は認識できず、今後の課題となっているそうだ。
実車では、車両の進路上に置いた人形めがけて時速25キロで突っ込み、急ブレーキがかかることを体験した。
無防備の歩行者の安全を守るこのシステム、早い時期の日本導入が期待されるという。だが、一連の体験を通じて、まずはドライバー自身が危険
回避を行うことが一番大事だと改めて肝に銘じたのだった。
画像:ボルボの最新安全技術「フルオートブレーキ付き衝突警告システム」の実験風景。人を感知して見事に急ブレーキがかかった
http://sankei.jp.msn.com/photos/economy/business/090927/biz0909271801001-n1.jpg http://sankei.jp.msn.com/photos/economy/business/090927/biz0909271801001-p2.jpg ソース:産経ニュース
http://sankei.jp.msn.com/economy/business/090927/biz0909271801001-n1.htm http://sankei.jp.msn.com/economy/business/090927/biz0909271801001-n2.htm http://sankei.jp.msn.com/economy/business/090927/biz0909271801001-n3.htm