世界に600種類存在するとされる食虫植物。しかし一般的には、獲物を二枚貝のような葉でパクリとしてしまうハエトリソウか、フットボール
のような袋に虫を落とし込むウツボカズラぐらいしか知られていないのでは?兵庫県立フラワーセンター(加西市)に、全国でも指折りの食虫
植物の専門家がいて、ちょうど食虫植物展(9月29日まで)が開催中だ。実際に食虫植物を育てたこともある私は、食虫植物をまるで
わが子のように愛でる“師匠”のもとを久しぶりに訪ねてみた。
(中略)
■土居さん
フラワーセンターの “名物”といえば、食虫植物の専門家である土居寛文さんだ。大学卒業後に園芸の世界に入り、食虫植物と“運命の
出合い”をする。その魅力は「虫を捕まえるすごさはもちろん、姿、形が何かを訴えかけるものがある。自然が作り上げた無駄のない芸術的な
システムは、見れば見るほど面白い。変人に思われるかもしれんけどな」と説明し、かっかと笑う。
「見た目は恐ろしそうに見えるけど、本当は他の植物との生存競争や環境の変化に弱い植物。そしてたどりついたのが人の少ない湿地
だった。水と光によって生きて、気の遠くなるような時間を経ながら昆虫から養分を変えていくことに成功したというわけ」
食虫植物を語る土居さんの表情は、まるで虫を捕まえて、腺毛についた粘液をきらきらと輝かせているモウセンゴケのように生き生きとしている。
土居さんは現在、センター内で200種類の食虫植物を栽培。いろいろな種類を交配させながら、変わった種類を次々に生み出している。
食虫植物は大きく分けて(1)「落とし込み式」(ウツボカズラ、サラセニア)(2)「粘着式」(モウセンゴケ、ムシトリスミレ)(3)「閉じこめ式」
(ハエトリソウ)(4)「吸い込み式」(タヌキモ)−の4種類があり、土居さんはこれらに属する種類をすべて栽培している。
とくに好きな食虫植物について尋ねてみると、「ウツボカズラもいいし、強さと美しさを兼ね備えたサラセニアもいいなあ…」とお迷いの様子。
ちなみに土居さんは食虫植物を「サラセニア軍団」「こいつら」−と、まるで人間のように呼ぶ。土居さんにとって食虫植物はすべて、かわいい
“子供たち”なのである。
■栽培できるヤツ、できないヤツ
「ぜひ食虫植物を育ててみたいのですが…」
初対面の時、私のわがままに応えて土居さんがプレゼントしてくれたのが、サラセニアとモウセンゴケだった。いずれも寒さにも強いため、
一般家庭でも育てることが可能なのだ。
サラセニアは、落とし込み式の代表格で、北米原産。白や赤、黄緑−と見た目がカラフルだ。傘つきの捕虫葉と呼ばれるラッパのような
口を天に向けた葉で、傘の裏側に出たみつをなめにやってきた虫を落とし込む。虫は落ちたが最後、捕虫葉の中がネコジャラシを逆さに
したような毛の構造になっているため、もがけばもがくほど、下に落ちてしまい、やがて底にたまった消化酵素によって溶かされていく。
一方、モウセンゴケは国内にも自生している。以前は田んぼのあぜなどにも普通に見られたそうだ。今ではそんな姿はなかなかお目に
かかれないが、湿地など水辺には自生しているのだとか。
土から上に伸びた葉一本一本についた腺毛に粘液がべっとりとついていて、虫にしか感じ取れない“フェロモン”で誘う。虫はトリモチのような
粘液に一度ついてしまうと、どんなにあがいてもその場を脱することができず、やがて力尽きて死んでしまう。
(中略)
ウツボカズラは東南アジアなどの熱帯の食虫植物であるため寒さに弱く、一般家庭で栽培するのは難しいという。フラワーセンターでは、
大きいときで直径50センチの袋をつけたウツボカズラの栽培に成功したことがあるそうだ。虫だけでなく、ネズミまで入ってしまったことがあり、
消化酵素で溶かされたネズミによる異臭が強烈だったため、中から“遺体”を取り出したことがあるというからすごい。
(以下略。全文と写真はソース元でどうぞ)
ソース(MSN産経ニュース)
http://sankei.jp.msn.com/science/science/090920/scn0909201301002-n1.htm