年に一度のアンアンセックス特集。もはや夏の風物詩的な感のある、女性誌最大級のセックス特集である。
(中略)
特集内容に文句があるわけじゃない。そりゃ、ヌードになった向井理君はキレイだったが、モックン、キムタク、ダルビッシュが脱いできたこの大舞台
に並ぶほどの大物だったのか、という疑問はある。でもそんなことよりも何よりも、今回の特集の目玉であった付録のDVDが、あんまりだったのだ。
女性による女性のためのセックスハウツーDVD。
テーマは「女性がリードするセックス」。昨今話題の“草食系男子”(セックスを面倒くさい、と考えるそうです)をその気にさせるテクニックを教える
内容だ。
休日の昼下がり。カップルがソファに座り、それぞれ本を読んでいる。太陽の光がいっぱい差し込む広々した部屋は、ギラギラした欲望が一切
ない清潔な空気に包まれている。「女性目線で語る」という女性によるナレーションを聞きながら観た。以下、“女性のリード”を促すナレーションを
抜粋しよう。
「彼の読書を邪魔しないで。彼が読書に飽きた頃、誘うのがポイント」(その間、彼女は読書をしているフリ)
「彼のテンションにあわせて、足並みを揃えるのが大切」(洋服を脱がされるときの注意です)
「はじらいを持ちつつ彼の気持ちを盛り上げましょう」(てへ、という上目づかいで、手は彼の首筋などを、触れるか触れないかの高度な技術を
駆使し感じさせ続けます)
「脱がせてっておねだりすると、好感を持たれます」(決して自分から脱いではいけない、と繰り返し注意してきます)
「女性が積極的になりすぎると、男性のプライドを傷つけるので注意しましょう」(こういうことばかり、ずっと言いつづけてます)
始まって数分。女性は息つく間もなく忙しい。男のプライドを傷つけないよう配慮しながら勃起させ、服を脱がせるよう仕向け、お風呂に導き、
お風呂では彼の体を洗い、しかしペニスを急に触るとひかれるので上半身だけを触り、石鹸の泡と気分を同時に盛り上げつつ、彼に先にお風呂
から出ていってもらうよう、タオルで体をふいてあげ、ふいてあげた直後に自分はお風呂に戻り、ヴァギナを洗い、ボディーチェックを鏡の前で行うので
ある。そしてベッドに入る前にこんなナレーションがすかさず!!
「ボディーチェックが終わったら速やかに彼のもとへ向かい、彼に身を委ねましょう」
す・み・や・か・に! なぜなら、彼を待たせてはいけないから……。
観ている側も気が抜けない。エロな気分になるどころか、気分はお仕事。こんな男は彼ではない。客である。笑顔で接客、楽しく盛り上げ、
時間を気にかけ、受け身を装う積極性で射精まで導く。女は大変だ。ナレーションもそう言っている。「女性は大変ですね」って、他人事か!
が、驚くのは早かった。ベッドシーンがまだある。ここで、驚愕の映像が!! 信じがたいことに! ベッドに入るまで、ペニスを一切触らず、服すら
自分からは脱がなかった女優が最初に行うのが、フェラチオ、なのであった。クンニよりも何よりも、すべてをさしおいて、フェラチオ!なぜ、それが
一番先? なぜなのなぜなの? 悶える私をせせら笑うように、DVDからはナレーターの女性がこうたたみかける。
「(フェラチオは)彼に直接、指導してもらうといいでしょう」
出た、「指導」! この段階で私はデリヘルに体験入店して、店長に指導を受けている風俗嬢の気分に。しかし、ようやく男優が女優の胸を
なめ始め少しほっとしていると、ナレーター店長が最後まで気を抜くな!とグサッと釘をさしてくるのであった。
「大きな声を出すと、演技に思われたり遊んでいる女性と思われます!」
思われたって、いいじゃねーか!の声は闇に消えていく……。
恋人間のセックスは女の無償労働である。そんな言葉が頭に浮かぶ。女が男を立たせるためには(チンコもプライドも)、ここまでの労働が必要
である。プライドを傷つけない配慮→10万円(知的労働です)、チンコを勃起させ続ける配慮→7000円(テキトーです)。あくまでも自然な流れ
で行うフェラチオ代→3万5000円(素人くささを装うプロの技です)、計14万2000円也でいかがでしょう!! 泣けますね。涙、プライスレスで
結構です。
(以下略)
ソース(雑誌記事@nifty:週刊朝日)
http://news.nifty.com/cs/magazine/detail/asahi-20090812-01/1.htm