中国の海軍力向上懸念 防衛白書 金総書記健康問題『北体制不安定化も』
2009年7月17日 夕刊
浜田靖一防衛相は十七日の閣議で、二〇〇九年版防衛白書を報告し、了承された。
中国の海軍力について、艦隊が昨年十月、初めて津軽海峡を通過し、
太平洋に進出したことなどを指摘した上で「より遠方海域で作戦を遂行する能力を向上させている」と懸念を表明した。
また、中国軍については空母を保有するための研究開発を進めていることもあわせて指摘した。
北朝鮮情勢では、四月の長距離弾道ミサイル発射などを踏まえ、長射程化や核兵器小型化の可能性に言及した。
金正日総書記の動向については
「健康問題が取りざたされ、六十七歳の年齢も考えると、近い将来に起こり得る権力構造の変化で体制が不安定化する可能性も排除できない」との見方を示した。
日本の防衛力整備に関しては初めて宇宙利用に関する一節を設けて
「安全保障分野における新たな宇宙開発利用を推進する」としている。
周辺国の軍拡強調 予算減歯止め狙う
◆解説
防衛省が十七日に公表した防衛白書は、中国など周辺国の軍拡傾向を強調することで、防衛費削減傾向に歯止めをかけたいとの思惑がにじみ出る内容となった。
今年の白書が特記したのは中国海軍の拡大。
昨年十月に日本を周回した中国艦隊の動きを図表付きで初公開するなど、中国海軍が南西諸島から太平洋へ進出しつつある実態を浮かび上がらせた。
国防費でも中国は二〇〇九年、景気減速の中でも15・3%の伸びを示したことを強調。ロシアも同年で国防費を前年比四割近く伸ばしたと報告した。
一方、日本の防衛費は「七年連続のマイナス」だと指摘。ミサイル防衛(MD)や海賊対策など、自衛隊の活動範囲が広がる中、
予算減は限界に来ていることを印象づけている。
だが、文民統制を揺るがした田母神俊雄前航空幕僚長の論文問題は半ページの記述のみ。
「不適切な見解を述べた」とするのみで、問題点の掘り下げはない。信頼できる組織への取り組みがなければ、
防衛費への国民の理解を得るのは難しい。 (政治部・三浦耕喜)
ソース
http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/news/CK2009071702000244.html