ロンドン郊外の通り沿いに建つ、教会を改築した建物。一歩足を踏み入れると、そこには一面、塩の世界が広がる。
シベリアの岩塩坑を再現したこの部屋では、ぜんそくなどの呼吸器症状に効果があるとされる「塩セラピー」
が行われている。
塩セラピーは「ハロセラピー」とも呼ばれる民間療法。19世紀後半、シベリアで岩塩を採掘する作業員らに
呼吸器の病気が非常に少ないことが分かったのをきっかけに、ロシアや東欧諸国に普及した。塩に含まれる
カリウムやマグネシウムなどのミネラルを吸い込むことで、たんなどの粘液を除去し、アレルギーによる炎症を
抑える効果が得られるとされる。
患者は地下にある岩塩の洞くつで1日2―3時間過ごすのが一般的。ロシアでは95年、岩塩坑を医療目的で
利用することを当局が正式に認可した。米医学専門誌NEJMでは06年、呼吸障害などを起こす遺伝的な病気
「のう胞性線維症」の患者を対象に塩セラピーを48週間続け、「安全で効果的な追加療法である」と結論付ける
研究が報告された。最近では米国内でも、各地のスパなどに導入され始めている。
ロンドン郊外に設けられた治療院では、床と壁を分厚い塩の層で覆った部屋に、岩塩の粒を含んだ空気が送り込まれる。
波の音が聞こえる静かな室内に、ゆったりと座ること1時間。これを1―2週間続けることでぜんそくなどの症状が
軽くなり、その効果は約1年間続くとされる。
設立者のソフィア・ベンクさん(30)はハンガリー出身。2年前に英国に住み始め、塩セラピーを受けられる
場所がないことに驚いたという。「私自身が鼻炎に悩んでいたので、母国でなじみのある岩塩抗をここに再現して
しまおうと思い立った」と語る。来院した人々からは、「アレルギーの薬がいらなくなった」などの声が上がって
いるという。
ただし、英国では今のところ、塩セラピーは保健当局に認可された治療法ではない。ぜんそく治療の専門医らは
「主治医と相談しながら、あくまで補完的な治療法として扱うべき。服薬を勝手に中止するのは危険な場合もある」
と警告している。
2009.06.28 Web posted at: 12:24 JST Updated - CNN
http://www.cnn.co.jp/science/CNN200906280002.html ロンドン郊外に開設された塩セラピー治療院
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