人材派遣大手フルキャストホールディングス(東京都渋谷区)とグループ会社の幹部らが1月、パワーハラスメントが原因の
「うつ」を診断書を添えて訴えた男性社員に対し、診断に疑問を示し、「採用時から『ろれつ』は回っていない」など、
侮辱ともとれるメールを交わしていたことがわかった。男性が入る労働組合は「心の病気を笑い物にする人権侵害だ」と抗議し、
同社は今月謝罪した。
男性社員(28)は、グループ会社トップスポット(東京都新宿区)に勤務。労働組合派遣ユニオン・フルキャストグループ支部
(フルキャストユニオン)は、一昨年から男性社員を含む組合員へのパワハラをめぐり、会社に改善を求めてきた。これに対し、
フルキャスト側はパワハラを否定。派遣ユニオンは昨秋、東京都労働委員会にあっせんを申請していた。
男性社員は昨年12月、診断書を都労委に提出。メールはこれを踏まえて書かれたとみられ、1月中旬、交渉に関係する
幹部数人が受け取ったメールに内容を残したまま、書き足していく形で送受信を重ねた。その際、一人が男性社員に誤って送信し、
発覚した。
一連のメールのうち、フルキャストのコンプライアンス責任者は、個人情報である男性社員の持病を明らかにしたうえで、
「鬱(うつ)かどうかはわかりません」との疑いを表明。さらにパワハラの影響を否定し、「採用時から、『ろれつ』は回っておりませんでした」
などと書いた。
男性社員は、ろれつが回らないというのは事実無根の言いがかりだとし、「メールを見たときはショックと悔しさで眠れないほどだった」と
話す。
同ユニオンは会社に強く抗議。これに対しフルキャストホールディングスは今月6日、社内メールの「不適切な記載」を認め、
漆崎博之社長名で男性に「お詫(わ)び」の文書を出した。関係者を処分するとともに再発防止策を講じるとしている。
フルキャスト広報室は朝日新聞の取材に対し、「労働委員会のあっせん中であり、コメントは差し控える」としている。(清川卓史)
2009年2月27日6時50分 asahi.com
http://www.asahi.com/national/update/0227/OSK200902260094.html