海外で人気があるトヨタ車を盗み、横浜港などから不正輸出を繰り返していた
窃盗グループの全容が県警の捜査で明らかになりつつある。被害総額数十億円
規模とみられる巨額不正輸出事件で県警は、グループ内で「ドバイの社長」と
呼ばれ、犯行全体を指示していたというパキスタン人の逮捕状を取り、行方を
追っている。 (岸本拓也)
県警が四日、盗品等有償譲り受け容疑で逮捕状を取ったのは、同国籍のフセイ
ン・イドリス容疑者(41)。
県警によると、フセイン容疑者は一九九七年に初来日。東京都内で貿易会社を
経営していたが、二〇〇六年ごろから、盗難車の不正輸出を始めたとみられて
いる。
これまでに解明された事件の構図では、「紙屋」と呼ばれ、輸出証明書を偽造
していた小田原市の代行請負業小野一浩(41)と、兵庫県尼崎市の仲買業仲
本哲也(44)の二被告=公判中=にフセイン容疑者が「トヨタ車を○月×日
までに□台頼む」と注文。
小野被告は関東、仲本被告は関西を拠点に「箱屋」と呼ばれる窃盗の実行犯グ
ループに指示、車を盗ませた。これに偽造した輸出証明書を付け、神戸や横浜
の港からドバイやロシアに輸出。車は現地のブローカーを通じて売却されてい
た。
県警の調べに、小野、仲本両被告は「千台以上、不正な輸出手続きをした」と
供述。現地で盗難車は一台百七十万−二百五十万円で取引されていたといい、
被害規模は数十億円とみられている。
狙われたのは、トヨタ社製のスポーツタイプ多目的車「ハリアー」や、RV
「ランドクルーザー」など人気車ばかり。壊れにくく、車体の部品に互換性が
あることから海外で人気という。
トヨタ車が狙われる理由は、盗みの手口にもある。
県警がこれまでに逮捕した箱屋が、トヨタ車の合鍵データの入った特殊なパソ
コンソフトを所持していたことが判明。このソフトを使い、車体に記されたあ
る番号を入力すると、適合する鍵の形状データが表示。合鍵を作り、車体を傷
つけることなく、車を盗み出したという。
箱屋は調べに、ソフトの入手先について供述を拒んでいるが、県警はフセイン
容疑者が、紙屋の小野被告らに詳細な手引を渡していたことから、このソフト
も一緒に準備したとみている。
フセイン容疑者の行方は〇七年十二月、フィリピンのマニラで姿を確認されて
以降は不明で、ドバイかフィリピンに潜伏しているとみられる。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/kanagawa/20090211/CK2009021102000058.html