輸入事故米を不正に転売し、日本の主食・コメの安全に対する信頼を揺るがせ
た「三笠フーズ」(破産手続き中)に対して、大阪府警などの合同捜査本部が
社長ら関係者の逮捕に踏みきった。問題が明るみに出てから5カ月余りで遅す
ぎた本格着手ではあるが、社長らの刑事責任の所在や、主管官庁である農水省
の関与の有無も明らかにしてほしい。
「食に対する安全」は近年、大きく揺らぎつつある。比内鶏(ひないどり)に
みられたような産地の偽装や表示偽装は後を絶たず、中国産冷凍ギョーザへの
毒物混入問題に至っては、中国政府との関係もからんで、未解決のままだ。
三笠フーズによる事故米の不正転売事件は、外国産米の最低輸入枠・ミニマム
アクセス(MA)という問題も重なって、複雑な様相を呈している。三笠フー
ズからコメを購入した企業が、事故米であることを本当に知らなかったかどう
かなど、解明されなければならない点は多い。
警察庁は食の安全を脅かす案件には厳しく、迅速に対処する方針を示している。
今回の着手容疑は不正競争防止法違反となっているが、さらに罰則の重い詐欺
や食品衛生法違反などが適用可能かどうか、捜査の行方を見守りたい。
農水省は今回の事態を厳しく受け止めるべきである。すでに大臣と事務次官が
一連の責任をとって辞任したほか、現場担当者の中には、不正転売をうすうす
感づいていながら見逃していたのではないかという疑いすら指摘された。政府
の有識者会議が昨年11月、「歴代農水相や局長、部長らの責任が最も重い」
とする調査報告書を消費者行政担当相に提出したのは当然だろう。生産者の視
線ではなく、消費者の視線で食の安全を守る策を打ち出してほしい。
それにしても、である。これほどの事態に至った原因について考えると、かつ
ての日本人が持っていた素朴な「食の安全神話」が根底から覆されていると認
めざるを得まい。
安価さのみを求め、中国などの安い野菜を輸入する一方で、一部の行き過ぎた
グルメブームに影響されて、内外の高級食材を過剰に珍重する風潮が背景にあ
った、とはいえないだろうか。
その点で、今回の事件を、消費者も「真に豊かな食生活とは何か」を原点に戻
って考え直す機会にすべきだ。
http://sankei.jp.msn.com/affairs/crime/090211/crm0902110314007-n1.htm