介護サービスの対価として事業者に支払われる介護報酬が、四月から3%引き上げられる。
二〇〇〇年に介護保険制度が導入されてから、初の増額改定だ。
介護の仕事は重労働だ。一方で、高齢化の進展により、重要性が増している。現下の不況で、
失業した人たちの雇用の受け皿としても期待されている。
働きがいのある職場にすることが大事だ。そのためには、報酬の増額が、職員の賃金に
しっかり反映されることが欠かせない。
賃金の上昇に結びつけることにより、介護現場で顕著な人手不足に歯止めがかかり、
介護サービスがさらに向上することを期待したい。
国が改定する狙いは、介護職員の待遇改善と人材確保だ。
過去二回の改定は、社会保障費抑制策の一環として、いずれも減額だった。賃金は伸びず、
二〇〇七年の平均月給は二十一万五千円ほどだ。退職者も後を絶たず、〇七年の離職率は
21・6%と全産業平均を大きく上回っている。
人手不足がさらに職員の負担を過重にするという悪循環だ。
厚生労働省の試算では、今回の報酬引き上げ分は、常勤換算で介護職員八十万人の賃金を、
月二万円増やすことができる額という。
問題は、介護事業者が報酬引き上げ分のうち、どれだけ職員の給与に回すかだ。
事業の収支改善のみに使うのであれば、職員の待遇は何ら変わらない。
事業者は改定の趣旨を十分に尊重し、待遇の改善に努めてほしい。
厚労省は改善状況を検証することを決めた。積極的に結果を公表すべきだろう。
改定では、介護福祉士などの有資格者や夜勤職員を基準より多く配置した事業所への
報酬を手厚くした。質の高いサービスを行う事業所への目配りと言えよう。
だが、心配も残る。高い報酬を得るため、事業所間で職員の引き抜きなど、混乱が起きないとも
限らない。特に小さな事業所には何らかの手当てが必要ではないか。
これまでの低賃金を考えると、今回の改定率でも物足りなさはぬぐえない。ただ、
報酬引き上げには、保険料や自己負担金の増加を伴う。
今回は追加経済対策として公費を投入、保険料の増加を最小限にとどめたが、
保険料負担はほぼ限界だ。次回改定が行われる三年後を見据え、負担のあり方など
制度の見直しも必要となってこよう。
五年後には三十万−五十万の介護職員の増員が必要とされる。魅力的な職場になってこそ、
人材が確保できることを忘れないでほしい。
▼ソース:北海道新聞
http://www.hokkaido-np.co.jp/news/editorial/140600.html