学校給食でご飯を出す目標値が、週4回に増えそうだ。23年前に決められた「3回」が全国平均で
達成されたことが分かり、文部科学省は今月、引き上げる方針を示した。ただ、パンに比べてご飯は
コストがかかり、一部の地域では給食費の値上げにつながる可能性もある。滞納が問題になり、不況が
深刻さを増すなか、国が一律に回数を決めることに対して、困惑の声も上がる。
戦後にコッペパンと脱脂粉乳を中心に始まった学校給食で、「米飯給食」が正式に導入されたのは
コメ余りが深刻な問題となっていた1976年。当時は週0.6回が平均値。85年には平均1.9回に
なったが「日本の伝統的食習慣を教えるため」として、「週3回」が目標とされた。
近年は食育基本法の制定や食への関心の高まり、学校で伝統文化や郷土の産品を教えようという
声などを背景に、米飯給食は増え続けている。目標を決めて以来、回数は伸び、この秋、07年は3回を
達成したことが速報値で分かった。「日本一」を掲げて助成制度を導入した山形県や週4回を達成した
高知県など、農産物の産地を中心に3.1回以上の府県が26に及ぶ。
これを受け文科省は、給食での地場産物活用を論議してきた協力者会議で、中間まとめ案に「週3回を
達成していない学校は早急に週3回以上を目指し、達成している学校は週4回程度を目標にする」と
盛り込むことを提案した。
これに対し、会議では、炊いたり容器を洗ったりするコスト面から異論が出された。
現在週2回の堺市の担当者は「全校で委託炊飯なので、米飯1人分で炊飯加工賃含めて10円ほど
高くなる。最近は小麦の値上がりで原料の価格差は縮まったが、それでも米飯はパンより高く、回数増で
給食費を上げることになりかねない」と発言。自校での炊飯設備を入れると、水道や電気設備工事も含め
多額の費用がかかるという。
全国で最も少ない週2.5回の神奈川県。川崎市に聞くと、「昨年度まで週2回だったが、今年度から
なんとか月1回分を増やした。炊飯設備も増やしたいがコストを考えると極めて厳しい」と話す。
「地場産物の活用」「伝統的な食生活」という観点からも意見が出た。
埼玉県は、学校給食用のパンやうどんに県産の小麦を使っている。米をやめて小麦に変えた農家や
加工業者もいる。「地場産物の活用が目標なら、それは米だけではない。そもそも国が全国一律、
半強制的にやらせるようなことは困る」と話す。
こうした意見を受け、文科省では「地域の実情に応じて」といった言葉を入れて年度内にまとめる
予定だ。(上野創)
▼ソース:朝日新聞
http://www.asahi.com/national/update/1230/TKY200812300167.html ※画像:週当たりの米飯給食回数(上)、米飯給食の平均回数(下)
http://www.asahi.com/national/update/1231/images/TKY200812300171.jpg http://www.asahi.com/national/update/1231/images/TKY200812300178.jpg