米国に漂う微妙な空気 ファンも選手も気乗り薄
前回のWBCで米国の2次予選敗退が決まった後、D・ジーター(ヤンキース)
に尋ねたことがある。米国のファンは失望していると思うか、と。彼は少し
考えた後、肯定も否定もせず「借りを作った」と答えた。ファンの反応を
測りかねていたようだ。その日の相手はすでに準決勝進出の望みがない
メキシコだったが、観客席にはメキシコ国旗ばかりが目についた。
先日、3年前を振り返って「何のために戦っているのか分からなかった」と
話したのはJ・バリテック(レッドソックス)。ハートフォード・コーラント紙の
D・アモーレ記者は「状況は当時と変わらないのでは」と現在の空気を読む。
「アメリカンフットボールのスーパーボウルでさえ当初、盛り上がりに欠けた。
ファンも選手もまだWBCに距離を置いている」。いまや米プロスポーツ界最大の
イベントも当初は苦戦。昨年は9750万人がテレビを見たとされるが、視聴者数
を一つの目安にするなら5000万人に達したのは6年目のことだった。
どこか冷めた反応のことを「LUKEWARM(気乗りしない)」と表現するが、本来、
旗振り役である米代表チームのトップの動きも鈍く、チームを率いるD・ジョンソン
監督が決まったのは昨年十二月十日。日本が代表監督でもめていたころ、
彼らは候補者の人選すら終えていなかった。昨夏にチーム体制を巡って選手
からボイコットの動きが出たベネズエラなどと比べ、スローぶりが際立つ。
雪辱を口にする選手もいるが、M・テシェイラ(エンゼルス)のように前回、屈辱
を味わいながら「もう出たくない」と話す選手も。米国内に今も漂う大会との
距離感。その裏にあるのは余裕か、LUKEWARMか。前回同様、米国の本気度
はつかめぬままだ。(スポーツライター 丹羽 政善) ※チームは昨年の所属
日本経済新聞 2009年1月1日(木)
ソース
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