★気温記録:幕末の夏暑かった 水戸藩の商人日記に記載
幕末の水戸藩の商人日記「大高氏記録」に1852(嘉永5)年から約15年間、寒暖計でほぼ定刻に測定した気温記録が
記載されていることを茨城大の磯田道史准教授(日本近世史)が確認した。19世紀半ばに日本人が機器で観測した気象記録は珍しい。
専門家は「現在のデータと比較することで長期的な気候変動が分かり、温暖化の進行を考えるうえで意義がある」と評価している。
毎日新聞が首都大学東京の財城真寿美・特任研究員の協力で、カ氏をセ氏に直し、観測時刻のずれなどを補正して現在の
水戸市の気温と比較した。それによると、15年間の1月の推定平均気温は2.3度(現在の平年値2.8度)、
8月は25.9度(同25.0度)で、現在より寒暖差が大きい傾向が見て取れた。
日記の写本は1868(明治元)年(1866年分は欠本)まであった。原則1日1回カ氏で記され「寒暖計は
朝五つ時(季節により午前6時半~8時)に記し」と注意書きがあった。記録がない日もあった。
寒暖計の種類についての具体的な記述はなかった。機器を使った国内の連続的な気象観測記録は、1872年に明治政府が函館に
気象観測所を開設するまで、1819年以降シーボルトら在留外国人と、江戸幕府が設置した研究機関が観測したものなど数点が
確認されているだけ。磯田准教授は「米相場に反映される飢饉(ききん)を把握するため、気温を知る必要があったのではないか」とみる。
【八田浩輔、秋田浩平】
◇公式記録なく貴重
19世紀の気象記録に詳しい三上岳彦帝京大教授(気候学)の話 公式な気象記録がない時期で極めて貴重な史料だ。
幕府や在留外国人による東京、横浜の気象観測記録と今回の記録を重ねると、1850年代の関東地方は一時的に高温だった可能性が
高い。現在の温暖化傾向が始まった時期を知る指標になる。
【ことば】大高氏記録 水戸藩の商人、大高氏が江戸後期から明治初期に残した76冊の日記。政治・社会情勢や
農産物価格などのほか気象に関する記述も多く、作家の故・吉村昭氏が歴史小説「桜田門外ノ変」の執筆で参考にしたとされる。
毎日新聞 2008年12月29日 2時30分(最終更新 12月29日 2時30分)
▼ソース:毎日新聞
http://mainichi.jp/select/wadai/news/20081229k0000m040078000c.html ※画像:幕末の水戸の様子が記された「大高氏記録」の茨城大が所蔵する写本=秋田浩平撮影
http://mainichi.jp/select/wadai/news/images/20081229k0000m040079000p_size5.jpg