★栃木・黒羽刑務所内で行われている性犯罪者の再犯防止教育の現場を取材しました。
性犯罪という卑劣な行動に人はなぜ走るのか、刑務所内で行われている教育の現場にカメラが入りました。
1日30分間だけ許された運動時間を過ごす受刑者たち。
栃木・大田原市にある黒羽刑務所は、犯罪の内容や経歴などから、比較的犯罪の傾向が進んでいない、
初犯の受刑者などを収容している。
そのため、ここで服役している性犯罪者たちに共通するのは、逮捕されるまで、表面上は普通の社会人として
生活していたこと。
自分が受け持っていた児童たちに、卑劣な行為をした元保育士(20代)。
児童に強制わいせつ・懲役4年の元保育士は「成人の女性に対して性欲を持てないというか、恐怖心ていう面を
すごく持っていまして。女の子に対して『下半身を触っていい?』と聞いていたんですね。子どもたちは、嫌とは
言えない状況だったんですけれども」と話した。
まったく面識のない女性に後ろから抱きつき、わいせつな行為をした男。
犯行の引き金となったのは、アルコールだったという。
強制わいせつ・懲役1年7カ月の元サラリーマン(30代)は「長時間飲んでいて、酔っ払っている状態で、横柄な
態度になっていて。もう、糸が切れている状態ですから、本当に(犯行は)力ずくだった」と話した。
強制わいせつ罪で逮捕されながら、執行猶予中に同じ罪を繰り返した元サラリーマンは、アダルトビデオの
影響を強く受けていたと語る。
強制わいせつ・懲役4年2カ月の元サラリーマン(40代)は「道を尋ねるふり、それから送るふりをして、女性の
胸を触りました。ゲームみたいな感覚にとらわれてしまったんだと思いますね。現実とバーチャルの世界の
区切りが、自分の中でなくなっていたと思う。自分では犯罪意識がまったくなくて、自分が捕まるなんて、
これっぽっちも思っていませんでした」と話した。
全国の刑務所には、2008年3月末時点で、女性暴行や強制わいせつなど、凶悪な性犯罪者だけでも、およそ
3,500人が服役している。
特に、性犯罪を繰り返す人間が問題視されており、再犯率は11.3%と報告されている。
そこで法務省は、再犯防止の教育を服役中に行う、欧米式の「性犯罪者処遇プログラム」を2006年にスタートさせた。
プログラムは、再犯リスクが高い性犯罪者を選び出し、教育が必要と判断された者を3段階のコースに分けて、
強制的に受講させる。
2008年10月末時点で、907人が受講している。
ニュースJAPAN取材班が撮影したのは、黒羽刑務所の「中密度」と呼ばれるコースで、1回100分間、全50回に及ぶ。
刑務所の教育担当者と民間の女性心理士が、性犯罪者のグループを「認知行動療法」という心理学的手法で指導する。
黒羽刑務所「性犯罪者処遇プログラム」担当の黒尾 誠教育専門官は「性欲が人一倍強い人が性犯罪者かというと、
そういうことではないと思います。『認知のゆがみ』という言葉を使っているんですが、一般的ではない価値観、ゆがんだ
考え方を強く持っている。自分の感情を含めた行動を、うまくコントロールできない人たちが多いのではないか」と話した。
プログラムは、性犯罪の原因である「認知のゆがみ」を受刑者自身が理解するために、「これまで歩んできた人生と心の
内側」を、グループですべて話す。
(
>>2以降に続く)
■ソース:Yahoo!News(動画あり)
http://headlines.yahoo.co.jp/videonews/fnn/20081216/20081216-00000917-fnn-soci.html (
>>1の続き)
そして最終段階で、「再犯防止プラン」を作成して、出所後の生活に備える。
黒尾教育専門官は「性犯罪を繰り返してしまう理由を理解するのは、非常に大切なんですが、問題は、
それを理解しただけでは再犯防止にはならないということ。例えば、痴漢の人が満員電車を避けるとか。
もう1つは、認知的な介入の仕方、頭の中で考え方を変える、価値観を変えるというようなアプローチの仕方があります」と話した。
全50回のコースを終えた受刑者たちに、心境の変化が起きたのか尋ねたところ、強制わいせつ・懲役1年7カ月の
元サラリーマン(30代)は「(被害者に残った心の傷について考えることは?)申し訳ない気持ちと、本当に謝罪しても
謝罪しきれない気持ちと...」と話し、涙を流した。
児童に強制わいせつ・懲役4年の元保育士は「そういうこと(再犯)のないように、やっていきたいと思っていますし、
今はやれると思っているところです、はい」と話した。
強制わいせつ・懲役4年2カ月の元サラリーマン(40代)は「また、自分の手で被害者を生むんじゃないかという恐怖感は、
正直あります」と話した。
性犯罪の再犯防止教育について、被害者の小林美佳さんは、複雑な思いを抱いている。
小林美佳さんは「加害者の一生を犠牲にしてほしい。自分たちに幸せになる権利がないと思って生きてほしいとか、
すごい悪い言い方になっちゃいますけど。一生、一生ですね、かけてほしい...」と話した。
(おわり)