★【視点】司法取引、議論のとき 鋼板カルテル
カルテル発覚の端緒は、平成18年の改正独占禁止法で導入された課徴金の
自首減免(リーニエンシー)制度だった。同制度は、違反行為を公正取引委員会に
“自首”した企業の課徴金を減免するものだ。公取委の調査前に自主申告した
最初の企業には、課徴金の全額免除だけでなく、刑事訴追も見送られる。
事実上の「司法取引」といえる。
今回、最初に申告したJFE鋼板が刑事告発を免れた。
昨年の名古屋地下鉄談合事件でも最初の申告企業が告発を免除されている。
制度導入以来、課徴金免除の目的に加え、株主対策などから、自主申告を行う企業が相次ぎ、
「違反の摘発に抜群の効果を発揮している」(公取委幹部)。
だが、制度本来の趣旨からすれば、“自首”と引き換えに得られる利益は課徴金の減免だけのはず。
明文化されていないのに、刑事訴追の免除まで認めているのは、制度に実効性を持たせるため、
公取委が告発も免除する方針を示し、検察当局もそれを尊重する立場をとっているからだ。
とはいえ、盗聴(通信傍受)やおとり捜査が限定的ながら認められている薬物犯罪でさえ、
司法取引は認められていない。独禁法だけ、なし崩し的に“司法取引”が運用されている
事実には違和感もある。一方で、犯罪は多様化の一途をみせているという実態もある。
司法取引は是か非かを、真っ正面から本格的に議論すべき時期に来ているのではないだろうか。
(河合龍一)
産經新聞
http://sankei.jp.msn.com/affairs/crime/081113/crm0811130136003-n1.htm