知事選・民主“不戦敗” 解散の読み外れ、人材もなく /栃木
◇地盤の弱さ浮き彫り
県知事選の投開票が16日に迫っている。現職で再選を目指す福田富一氏(55)=自、公推薦=と、
渡辺繁氏(60)=共産公認=の2人が立候補した。だが民主党県連は独自候補の擁立を断念し、
“不戦敗”が決まった。また民主は、年明け以降への持ち越しが確定的となった次期衆院選を巡っても、
県北の3区での候補者擁立が難航。県内での地盤の弱さ、実力不足が露呈した形となっている。
知事選断念に至った背景と、今後の動向を探った。【松谷譲二】
◆断念
「残念ながら、確たる候補者を得ることができなかった」。10月8日、宇都宮市の県職員会館で
開かれた民主党県連の緊急幹事会。その後の会見で、県連代表・簗瀬進衆院議員は
「県民に選択肢を提供しようと取り組んできたが、断念やむなしの結論を出した」と唇をかみ締めた。
同席の谷博之参院議員は、10人近くに出馬打診したことを明かし、「(県選出の)国会議員の中から、
という声もあったが擁立できなかった」と話した。
◆市長選優先の擁立
県連は今年3月から、県知事選の独自候補擁立に向けて、同時期実施の宇都宮市長選と並行して
調整を進めていた。だが、双方同じ力配分で候補者選びが進められるほど人材にゆとりがないのが実情で、
優先されたのは市長選だった。
県連が宇都宮市長選を優先したのは、昨年9月、次期衆院選をにらみ、1区から石森久嗣氏(46)の
擁立を決めていたためだ。1区の大票田は宇都宮市。市長選とならば選挙運動が連動させやすい。
しかし、その市長選の候補者選びですら調整は難航し、8月末、ようやく今井恭男氏(57)の擁立に
こぎつけた。
◆突然の首相辞任
知事選の候補者擁立に取り組みを移した直後の9月1日、民主にとって第一の誤算が生じた。
突然、福田康夫前首相が辞任を表明。早期の解散・総選挙が現実味を帯びたことだ。
当初は10月初旬解散論も叫ばれ、情勢は一変した。
知事選と宇都宮市長選に、衆院選も加わる「トリプル選挙」になれば、取り組みが拡散し、
勢いがそがれるのは明らかだった。簗瀬衆院議員は会見で、「市長選と衆院選のダブル選挙なら
対応できるのだが……」と苦しい胸の内を語った。
国会議員など県連幹部は、総選挙準備に時間を割かれ、知事選に集中して取り組める情勢では
なくなった。結局時間切れで、知事選の“不戦敗”が決まった。
◆誤算はさらに
県連は知事選の対応について、特に幹事会などを開かず、事実上の自主投票で静観する構え。
その分、衆院選と宇都宮市長選に持てる力をすべてぶつける策を取った。
しかし、その民主に再び誤算が生じた。米国発の金融危機が世界的に飛び火し、
日本を含む主要国の株式相場が暴落。深刻な景気後退に陥る可能性が高まったことを理由に、
麻生太郎首相が早期の解散・総選挙の実施を見送った。
県知事選で推薦、公認候補者を立てた自民と共産が全県で、政策PRと衆院選をにらんだ
組織構築に走る中、読みが狂った民主には、この時期身動きできないという現実だけが残った。
◆3区擁立も難航
次期衆院選の対応も順調とはいえない。県内小選挙区5区のうち、3区でいまだに擁立できていない。
だが、県連内ではあきらめムードが強い。1区石森氏、5区富岡芳忠氏(42)の2人は民主党の
1、2次公認から漏れ、現在3次公認を待っている状態。ある県連関係者は「1、5区で手いっぱい」と明かす。
別の関係者は「人材がないから、組織戦ができない」と嘆く。県連は、次期衆院選を含めた大型選挙で、
県民に選択肢を示すという当然の責任を全うできる体制をいかに築くか、大きな課題に直面している。
毎日新聞 2008年11月6日 地方版
http://mainichi.jp/area/tochigi/wide/news/20081106ddlk09010007000c.html