日曜日の昼下がり、混雑したターミナル駅で電車に乗ろうと歩いている複数の女性を、突然腕の痛みが襲う。切られた腕から
流れる血を見たときの驚き。犯人がどこにいるか分からない恐怖ははかりしれない。
大阪市北区のJR大阪駅構内で今年6月、女性2人をカミソリで切りつけるなどしたとして傷害と暴行の罪に問われた無職、
大山和歌(かずか)被告(38)=神戸市西区。14日、大阪地裁で開かれた公判での被告人質問では、沈黙や「思いだせない」
と投げやりな返答を繰り返し、検察官に「あなた自身のことですよ」ときちんと答えるよう何度も指摘された。
そんな大山被告が法廷で唯一はっきりと訴えたのは「子供に会いたい」。小学生の息子に会えないいらだちが事件の引き金の
一つだったという。
(中略)
「つけまつげやアイラインを欠かさなかった」(近所の住民)という厚化粧から一転、大山被告は地味な銀縁メガネをかけて
14日の公判に出廷した。ぽっちゃりした体型に腰まで伸び切った茶髪。緊張しているのか、ピンクのタオルハンカチで何度も
顔をぬぐう。
弁護人が犯行の動機を尋ねると、思いのほか弱々しい声で答えた。
「子供と一緒に暮らせないイライラやJRに腕を挟まれたり、顔に傷を付けられたり、いろんなことが重なってやった」
逮捕直後、大山被告について大阪府警の捜査員は「被害妄想的な女」と表現した。数年前まで覚醒(かくせい)剤を使用して
いたといい、後遺症の可能性も指摘されている。
高校卒業後、ガソリンスタンドやコンビニなどで働いたが、長く続くことはなかった。捜査関係者によると、数年前まで静岡県で
元夫と暮らしていたが離婚。このころ覚醒剤を使用、逮捕されたという。
半年前から神戸市西区で1人暮らしを始めたが、親の仕送りに頼る生活だった。子供も母親の元に引き取られていた。
検察官の被告人質問では、大山被告の被害妄想的な面が浮かび上がった。
検察官「イライラして人を傷つけたのか」
被告「私も追い込まれる状況にあった。顔にも傷つけられて…。イライラした気持ちは解消されなかったが、多少は半減したかも
しれない」
検察官「顔の傷とは。どうして人に傷つけられたと思うのか」
被告「自分ではやっていないから。私の部屋のものも何かとなくなる」
検察官「被害妄想では」 被告「違います。うそをついてるって言うんですか?」
驚いたように抗議する大山被告。知らない間に人に顔を傷つけられるなどということが本当にあったのか、検察官は納得の
いかない様子だ。
検察官「相手の痛がるそぶりを見ることでイライラを解消したのか」
被告「…。思いだせないから分からない。事情聴取に答えたとおり」
検察官「あなた自身のことですよ。これまで考えなかったのか」
被告「考える余裕がなかった。精神安定剤を飲めなくなって精神的につらくて、自分を支えるので精いっぱい。事件のことも
あまり考えたくなくて」
検察官「きちんと考えないと、同じことを繰り返すことになる」 被告「…」
検察官「今被害者がどんな気持ちか、考える余裕はないのか」
被告「考えなきゃいけないのは分かっているが、自分が精神的に不安定で」
裁判官「事件の時は精神安定剤を飲めていたのか。今より安定していたか」 被告「そうです」
裁判官「それにもかかわらず、針やカミソリで人を傷つけたのか」 被告「…」
(中略)
左腕を切りつけられ、25針を縫う大けがをした20代女性は事件後、産経新聞の取材に「左腕のぱっくりと割れた傷口が脳裏
に焼き付いている。恐怖で心臓の鼓動が速まり、自分は殺されていたかもしれないと思うと外出できない」と話した。今も後遺症
に苦しんでいるという。
息子は、事件と向き合わない母親をどう思っているのだろうか。
ソース(MSN産経ニュース) ※ソース元に写真あり
http://sankei.jp.msn.com/affairs/trial/081018/trl0810181837003-n1.htm