★社説:総合経済対策 これでは安心できない
政府、与党の総合経済対策がようやくまとまった。
経済は生き物で、景気対策にはスピードが不可欠。遅きに失した面もあるが、
感度の鈍い福田政権にしては上出来、と受け止めるべきなのかもしれない。
正式に決めたとはいっても、国会審議はこれからで、実際に対策が講じられるのは
まだまだ先の話。今後はこれまでの遅れを取り戻すくらいの覚悟が必要だ。
党利党略による審議の遅れなど許されるはずもない。
中身にも不安が残る。肝心の景気刺激効果がどの程度あるのか、判然としないのである。
確かに総額11兆7000億円というと、相当な事業規模だ。物価高に苦しむ
国民や農漁業者、中小企業の支援に力点を置いたところも悪くはない。
しかし、どうしても総花的でいまひとつインパクトがないのだ。
世界的な景気変調という荒波を乗り切るためには、
産業の構造改革など日本経済の足腰を鍛える施策も欠かせない。
ところが対策には、そんな長期的な視点に立った対策はほとんどみられないのである。
なぜ対症療法的で近視眼的な内容となってしまうのか。
最大の要因は近づく衆院選をにらみ、選挙対策にしたいとの思惑が強く働くからだ。
それを如実に物語るのが、所得税と住民税の「定額減税」である。
額は別にして実質上、家計の実入りが増えるだけに選挙での効果は言わずもがなだ。
ただ問題点を指摘しないわけにはいかない。減税した分の税収減をどうするかである。
減税分が消費に回らず、景気浮揚に役立たないばかりか、結局、赤字国債の追加発行に
追い込まれるようでは意味がない。
減税に象徴される「ばらまき路線」回帰は、与党内事情に大きく左右されている。
公明党抜きに選挙を戦えない自民党が、公明の減税要求をのまざるを得なかったのだ。
この力関係も再認識しておく必要がある。
総額11兆7000億円のうち、実質的な財政支出を伴うのは2兆円。
その大半が盛り込まれる本年度補正予算案の財源確保も難題として浮上している。
あちこちからかき集めても足りない可能性が高い。
福田康夫首相は現時点では赤字国債の発行を否定しているが、
公明に加え自民からも歳出圧力が高まる中、どこまで抗し切れるか。
効果的な経済対策を打ち出さなければいけない半面、
「財政健全化路線」を堅持できるかどうかも大きな課題なのだ。
仮に景気後退に歯止めがかからず、借金だけが膨らむような事態となれば、
福田政権どころか、日本の行方自体に一層暗雲が垂れ込めることになる。
政府、与党の経済対策に固執する必要はない。
臨時国会での与野党論戦によって、効果が十分期待できる対策に練り上げてほしい。
そうしないと政府、与党のいう「安心実現のための緊急総合対策」にはならない。
秋田魁新報
http://www.sakigake.jp/p/editorial/news.jsp?kc=20080831az