★海賊対策法を整備へ、公海上の逮捕可能に
政府は22日、海賊行為など外国籍船の公海上での不法な行為を取り締まる根拠となる
国内法を整備する方針を決めた。
早ければ来年の通常国会に刑法改正案か新法を提出する。国連海洋法条約は各国に
公海上の海賊行為の取り締まりを認めており、政府は海上交通路(シーレーン)の
安全確保などにつなげたい考えだ。
国連海洋法条約は締約国に公海上の海賊取り締まりを認める一方、具体的な方法や
司法手続きは各国の国内法に委ねている。しかし、日本では国内法が未整備のため、
海上保安庁などが公海上で取り締まり、日本の裁判にかけることができるのは、
日本籍船での犯罪行為や外国船で日本人が被害者になった事件など、
日本の刑法が適用されるケースに限られている。
日本の貿易を支える外航海運は多くが「便宜置籍船」と呼ばれる外国籍船だ。
船員も外国人が多いため、こうした船が公海上で海賊に襲われても、現状では対応できない。
法整備にあたっては処罰対象となる不法行為を、
〈1〉私有船や航空機の乗組員や旅客が、公海上の他の船や航空機などに対して行う
不法な暴力行為、抑留または略奪行為
〈2〉海賊船や海賊機と知って運航に自発的に参加する行為
〈3〉これらを扇動する行為――などと定義し、罰則などを定める。
国内法整備により、海保の係官らは海賊の逮捕や海賊船の拿捕(だほ)が可能になる。
米国の反捕鯨団体「シー・シェパード」が昨年2月、日本の調査捕鯨船の活動を妨害した
事件のように不法行為の実行者が特定できなくても、船長らを摘発できるようになる見通しだ。
ただ、政府は今回の法整備は「一義的には海保の活用を念頭にしたもの」(政府筋)としている。
自衛隊がインド洋などで活動する場合、認められている武器の使用は正当防衛や緊急避難時などに
限られている。海賊への対処には、武器使用基準の緩和を盛り込んだ法整備が別に必要となり、
その際、現行の憲法解釈が議論になる可能性もあると見られるためだ。
国際海事局(IMB)によると、世界の海賊の被害は2007年に263件で、
70件が東南アジア、120件はアフリカ方面で発生した。
日本関係船の被害も10件あった。今月21日にはアフリカ・ソマリア沖で日本の海運会社が
管理するパナマ船籍のケミカルタンカーが海賊に乗っ取られる事件が発生し、
福田首相は海賊対策の法整備を急ぐ考えを示していた。
讀賣新聞
http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20080823-OYT1T00008.htm