★【主張】経済対策 ばらまき排し構造転換を
福田康夫首相の指示を受け政府・与党は近く経済対策をまとめる。
確かに日本経済は原油など原材料価格の高騰に直撃されているが、単なるばらまきでは
財政を悪化させるだけで、何の効果も生まないことを忘れてはならない。
原材料価格の高騰は企業にコスト上昇をもたらして収益を圧迫、消費者物価にも波及し始め、
個人消費に影響が出ている。加えて米サブプライムローン問題の影響などで株価も低迷したままだ。
政府も8月の月例経済報告で判断を「回復」から「弱含み」に下方修正し、
景気拡大の認識に終止符を打った。民間エコノミストには景気後退入りの声まである。
こんな状況に対応するための総合的経済対策のメニューとして、資金繰りを中心とした
中小企業対策や農家などへの燃料費支援、雇用対策などが検討されている。
ここで留意せねばならないのは、まず原材料価格の高騰が一過性ではない点である。
中国やインドなど途上国の台頭による構造的な需給逼迫が背景にあり、投機資金による
価格上昇分が剥落しても高止まりするからだ。
このため、高水準の原材料価格に対応できる経済への構造転換に資するかどうかが重要になる。
先に決定した漁船への燃料費補填のように、複雑な流通経路などの構造問題を
放置したままでは効果は期待できない。
財政への悪影響も注意が必要だ。政府は大型公共事業は実施しないとし、
財源も予備費や昨年度の剰余金を充てる方針だが、自民党内には大規模な
今年度補正予算編成によるさらなる景気対策を求める声が大きい。
ねじれ国会下での総選挙を控えているからで、財政規律の緩みが顕著だ。
財政再建より景気対策が重要とする麻生太郎幹事長を中心に、政府目標である
2011年度の基礎的財政収支黒字化を先送りする動きも強まっている。
小泉構造改革の5年半は、金融システム不安からあれほどデフレが深刻化しても
財政出動を伴う景気対策は行わなかった。それが日本企業を筋肉質化し、
その後の長期の景気拡大を生み出したことを想起してほしい。
安易に財政再建の旗を降ろせば、市場に失望感を与え日本売りにつながろう。
それは逆に景気の足を引っ張って成長を阻害することを深く認識すべきである。
産經新聞
http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/080808/plc0808080314002-n1.htm